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2008年11月

2008年11月 4日 (火)

空の下で.エース(その9)

駅伝メンバー発表の翌日、ぼくら長距離チームは上柚木競技場へと来ていた。

雪沢先輩と名高のどちらをエース区間である1区にするか、

それを決めるタイムトライヤルをするためだ。

 

 

競技場ってのは意外にもけっこう簡単に借りれるらしい。

昨日の夕方、簡単な手続きで競技場の予約が取れた。

といっても貸切ではなくて、他の高校や一般市民ランナーの人もいた。

 

 

今日は風が強い。南の方から時折強風が吹き抜ける。

台風が九州に上陸して東へ進んでいるという。

明日には関東も暴風雨になるという話だ。

 

 

「よーし、じゃあタイムトライアルすんぞー」

五月先生の号令でぼくらは400メートルトラックのスタート地点に集まった。

タイムトライアルは雪沢先輩と名高だけじゃなく、全員参加することになった。

久し振りに部内での本気の対決だ。

でもワクワク感はあまり無い。

エース争いという、なんだか重い空気に包まれた感じだ。

 

 

当事者である雪沢先輩はいつもと変わらない感じだ。

やや茶色の髪の毛が強風でなびいている。

そして名高は険しい顔で前を見つめている。

どうしてもエース区間で走りたいらしい。

その名高が五月先生に確認した。

「このトライアルで一位だったら一区を走れるんですか」

「そうだな。そういう事にしよう。ただし雪沢か名高が一位だったらだ。他のヤツが一位だったとしても今日だけって可能性もあるからな。実績から考えて二人のどちらかだ。そういうレースにする。いいな、みんな」

「充分っす」

名高は深くうなづいた。

「名高」

今度は五月先生が確認する。

「なんすか」

「このレースの結果で駅伝オーダーは決定だからな。たとえ負けたとしても腐るなよ」

「腐る・・・」

名高はちょっと考えた。

予想していない言葉だったのだろう。

「腐りませんよ。オレは駅伝って興味あるし。それにデカイ大会だし」

「そうか」

「それに・・・勝つつもりで走りますから」

名高はいっつも心臓に悪い発言ばかりだけど、最後のセリフには感心した。

勝つつもりで走る・・・

大胆な発言だけれど、スポーツ選手にとってその考え方は大切なモノかもしれない。

雪沢先輩はそれを聞いて名高に言った。

「オレも、負けるわけにはいかない」

いつも爽やかな雪沢先輩がふいに見せた熱意を感じた。

 

 

ぼくらはスタート地点に立った。

風は相変わらず強い。時折、突風みたいなのまで吹いている。

「実際に駅伝大会でも強風ってコトもあるからな。いい経験になるかもね」

雪沢先輩はそんなことを言った。

エース争いの爆心地にいる人なのに、どこか冷めているような感じだ。

でも、ぼくは新人戦で名高に負けた時の雪沢先輩の悔しそうな顔を忘れていない。

燃えてる心は内に秘めているんだと思う。

「じゃ、構えて」

五月先生が言うと全員が構えた。

その時、競技場の芝生席に、この場には不釣り合いな不良風な男子学生を見つけた。

不良風だと思ったのは髪の色のせいだ。

顔は遠くて見えないけど、髪は真っ赤に染まっている。

ぼくらの事を見つめているような感じだ。

誰だろ・・・。

「ヨーイ」

五月先生の声で意識がレースに戻る。

「ドン!!」

 

 

10キロというのは400メートルトラックにすると25週だ。

グルグルグルグルとトラックを回る。

ぼくは名高と雪沢先輩からは2周遅れになった。

それでも大山を1週遅れにしてやった。

それほど実力差が出てしまうレースだった。

息切れしながらも横眼で雪沢先輩と名高の勝負は見ていた。

二人はずっと並んで走っていたが、残り3周で名高が抜き出た。

しかしラスト一周、雪沢先輩が鬼の形相で名高を逆転し一位でゴールした。

順位は雪沢先輩・名高・牧野・ぼく・穴川先輩・剛塚・大山の順だった。

 

 

全員ゴールした時、雪沢先輩は名高に言った。

「みんな、けっこう早くなったな。名高はけっこうどころじゃないけど」

「・・・。でもオレは負けましたよ」

名高は悔しそうだ。

「負けたけどさ。次はどうかわかんないよ」

「・・・。負けは負けです」

名高は下を向いてしまった。なんだか似合わないポーズだ。

「名高、おまえ腐らないんじゃなかったのかよ」

雪沢先輩は珍しくキツイ口調でそう言った。

「・・・。腐らない・・・ですよ」

そう言って顔を上げた名高は何故か笑顔だった。

「早いっすね雪沢先輩。新人戦の時よりも。なんだか争っていて楽しくなっちゃいました」

ゾクリとした。

名高のヤツ、負けたくせに、強敵と戦うことが楽しく感じてる・・・。

「早くなるわけだ・・・」

見ていた牧野がそうつぶやいた。

本当だ。ストイックなんだ、名高は。

その名高は雪沢先輩にこんなエールを送った。

「頼みますよ一区は。オレに勝つぐらいなんですから。オレは他の区間で順位を上げますから」

「ああ、頑張りまくるよ」

雪沢先輩は爽やかにそう言った。

モテそうだな。

久し振りにそう思った。

その雪沢先輩は名高の胸をどついた。

「いて」

「駅伝、楽しもうな。名高」

一瞬あっけにとられた名高だったけど、すぐにニヤっと笑って言った。

「当たり前っすよ」

 

 

東京高校駅伝のエース争いという、嵐のレースは終わった。

でもぼくらにとっての本当の嵐はこの直後にやってくるんだ。

その事に少しでも気づいていたのは剛塚だけだった。

 

 

エース編 END → NEXT 嵐編

 

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2008年11月 5日 (水)

エース編、描き終わりましたー!

10月いっぱいかかったエース編が終わりました。

今思えば「エース編」ではなくて「エース争い編」の方がタイトルよかったでしょうか・・?

 

名高と雪沢が話題の中心でしたけど、二人とも今まで発言がそんなに多くないし

(名高は無口だし、雪沢は先輩なので登場自体が少ないし)

おまけに感情を表に出さない感じなので、結局周りにいる英太や牧野が話を

進めてる感じでしたねぇ・・・。難しいものですよ。はあ・・。

 

そんな中、物語は秋の駅伝大会に向けて進んでいきます。

これまでの個人種目ではなくて団体戦です。

長距離チームにとっては年間最大の大会となります。

(実際に駅伝大会をメインと位置づけてる高校は多いらしい。知人談)

はたして多摩境高校チームの行方はーー??

秋の駅伝大会なのに大会のシーンは12月になりそうです。冬じゃん!

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2008年11月 6日 (木)

高橋尚子さん引退

ぼくが知ってる現役の長距離ランナーはほんの数人です。

その中でも高橋尚子さんは特別な存在でした。

2000年のシドニーオリンピックは仕事をほっぽりだしてテレビ中継を見てました。

あんな明るい性格の長距離ランナーは高橋尚子さんだけじゃないでしょうか。

 

その後、怪我に苦しんだりしていて大活躍することは少なかったですが

ぼくの尊敬するスポーツ選手のうちの一人です。

「空の下で」は高校の長距離ランナー達を題材にしてるので

今日、ついこの話を書いてしまいました。

(空の下で本編でも一度だけ高橋尚子さんの名前が出てきた事がありますが・・・)

だって、あまりにもスッゴイ選手だからです。

 

その高橋尚子さんが先日、引退されました。

これは日本長距離界にとっては一大ニュースでしょうけど

ぼくにとっても大ニュースなわけです。

  

高橋尚子さん、今まで感動をありがとうございます。

そしてお疲れ様でした。

また新たな場所で輝いていくことを願っています。

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2008年11月 7日 (金)

空の下で.嵐(その1)

ついさっきまで見えていた夕焼け空が雲に覆われていく。

その雲はものすごい早さで遠くから押し寄せてきていた。

そう、まさに押し寄せるという表現が一番正しく感じる。

遠くに見える山梨の山脈の方から分厚い雲が次々と。

まるで、何か不安な事の前兆であるかの様に。

 

ぼくらが上柚木競技場でタイムトライアルを終えて、着替えている間に空は雲に埋め尽くされ、午後4時だというのに夜中のように暗くなった。

風も強くなる一方だ。

時折、ビュウっという音ともに電線が激しく揺れている。 

台風が思ったよりも早く関東に接近してきてるのかもしれない。

「なんだか嫌な感じだな」

練習着から制服に着替えた牧野がつぶやいた。

 

「集合ー!」

五月先生が号令をかけた。

ぼくら長距離チームは全員集まる。

みんなもう制服に着替え終わっている。

強風でくるみと早川舞の髪がすごいなびいているけど、未華はショートカットなので全然平気そうだ。

「今日はこれで解散する!台風も近付いてきてるし、早めに家に帰るように!解散!」

「おつかれさまでした!」

みんなそろってそう言って、それぞれ帰路についた。

 

ぼくは牧野と二人で南大沢の駅に向かって歩いた。

前の方にはくるみと未華が歩いてる。

「英太、おまえ強風に期待とかしてないだろうな」

「は?どういうこと?」

「い、いや。別に」

「それにしてもさ、結局雪沢先輩が勝ったね」

「だな」

「てことは一区は雪沢先輩が走るんだよね。10キロ。大変だなー」

ぼくがそう言うと牧野はため息をついて言った。

「大変だなーって。英太、おまえアンカー走るんだぞ。他人事みたいに言うなよ」

「そ、そうだった」

言われて思い出した。七人のうちのラストを走るんだった。

「アンカーってのは責任重いよね・・・。小学校の運動会だってクラス対抗リレーのアンカー選びはモメたもん」

「英太」

「え、いや、そんな呆れるなって牧野。例えが悪いってツッコミたいんでしょ。例え話は下手だったかもだけど、ちゃんと責任持って走るって。ホント」

「英太・・・・」

「あれ?か、軽く聞こえる?ホント、真剣だよ。マジってやつだよ」

「そうじゃなくて」

「じゃ、じゃあ何だよ」

「前見ろ英太」

「は?」

前を見ると、少し先にくるみと未華がいた。

二人は立ち止っているようだ。

「なにしてんだろ」

よく見ると二人は他の学校の男子生徒と話しているようだ。

男子生徒は三人いるみたいだけど、どいつもなんだか見た目が怖そうだ。

「ナンパか?」

牧野は真剣な目つきでくるみ達の方を見ていた。

「英太、ちょっと邪魔しに行こう。なんだか嫌な感じがする」

「う、うん」

ちょっと怖かったけど、ぼくはうなづいた。

くるみと未華がナンパされてるのがイヤだというのもあったけど、確かに何か嫌な予感があったからだ。

後ろから近づいて、くるみに声をかけた。

「何してんの」

振り返ったくるみは涙目になっていた。

「英太くん、牧野くん」 

「ど、どうした」

ドキっとした。でもなるべく動揺してないように見せた。

未華がぼくと牧野の方を見て言った。

「なんか・・・からまれちゃった」

未華も声が震えている。

やっぱり声をかけて良かった。何か嫌な事態が起きている。

ここで男子高生のうちの一人がぼくに向かって低い声を出した。

「誰だよ。おめーは」

落ち着いた低音だ。ムリして驚かそうという作った声じゃない、元からの低音。

それが怖さに拍車をかけていた。

「こいつらの友達だよ」

ぼくはそう言った。

「はあーん?トモダチね。カレシとかじゃねーんだ」

嫌な言い方と顔だ。それにまだらに染めた赤い髪がいかにも悪そうな感じだ。

赤い髪・・・?

「あ・・・。さっきタイムトライアルを見ていた・・・」

そう、さっきタイムトライアルする直前に、芝生席で見ていたヤツだ。

そいつがなんで未華とくるみにからんでるんだ?

赤髪はニヤッと笑って言った。

「お前、陸上部か。多摩境高校の」

「そうだけど?」

ぼくは何とか気押されしないように答えた。

牧野も相手を睨んだままだ。

「そーかそーか。じゃ、話は早いや。いやさ、オレ達は剛塚に用があるんだ」

「剛塚に?」

ぼくは未華の方を見た。未華はうなづいている。

ナンパされてたわけではないのか。

「さっきお前ら近くの競技場で練習してたろ?そん時剛塚が走ってるのを見てさ。

んで、たまには会いたいなーって思ってよ。仲間呼んでるうちに練習終わっちまって。

んで、ウロウロしてたら練習にいた女のコ二人がいたから声かけたって訳よ」

他の男子生徒二人は「そうそう」とか「だな」とか言ってる。

「でもよ、なんかこの女のコ達、剛塚がどっち行ったか教えてくんない訳よ。だからちょっと怒鳴っちゃったってだけ」

「怒鳴った??」

やっぱり嫌な感じがする。ぼくの感が脳に訴えている。何か危ない、と。

ここで赤髪がよくわからない事を言った。

「んで?どっち行ったわけ?裏切り者の剛塚は」

 

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2008年11月11日 (火)

空の下で.嵐(その2)

ゴオゴオと音を立て、電線が強風でなびいている。

不気味な音の下で、ぼくらは正体不明の赤髪の学生にすごまれている。

「裏切り者の剛塚はどこに行った?」

赤髪の学生はこう言う。

どうやら剛塚を捜しているみたいだけど、裏切り者ってのは何だろう。

それにコイツらは剛塚に会って何をするというのだろう。

「だから剛塚くんがどっちに帰ったかなんて知らないってば」

未華は赤髪にそう言ったが、赤髪は睨んで答えた。

「知らねーことねーだろが。同じ部なんだろがよ」

「同じ部だからって何でも知ってるわけないじゃん!」

未華は大きめの声でそう言ったけど、赤髪は聞いてないようなそぶりでぼくを見た。

「お前は知らないのか?」

「ぼくも・・・知らないよ」

ぼくがそう答えると牧野も「オレも」と続いた。

ぼくらはホントに知らなかった。剛塚がどっち行ったかなんて。

だからこれでやりすごせる。そう思った。

ところが赤髪はこう言いだしたのだ。

「じゃあ連絡とれ」

「え?」

「電話しろよ。知ってるだろ、携帯番号くらい」

ぼくらは顔を見合わせた。

知ってる・・・。

入部したころ、長距離チーム全員の連絡先は教えあっていた。

当然、剛塚の番号もみんなが知っている。

それが赤髪にも伝わってしまったのだろう、赤髪はニヤリと笑った。

「知ってるみたいだな」

すると後ろにいた二人の男子学生もニヤニヤしだした。

「知っててもかけないよ」

未華がそう言った瞬間、赤髪は未華の髪の毛をワシつかみにした。

「いたっ!!」

「み、未華!」

あわてて牧野が赤髪の腕をつかんで、未華から離れさせた。

「テメ・・・女に手を出すなんてどういうつもりだよ」

「あ?知るかよんなこと。番号知ってるくせにかけないとか言うからだ」

「てめぇ・・・」

牧野はそうつぶやいて赤髪に掴みかかろうとした。

しかし、他の二人の男子学生が牧野の後ろに回り、腕で牧野を抑えつけた。

「牧野!お、おいやめろ」

ぼくは大声でそう叫んで、男子生徒のうちの一人の肩をつかんだ。

でも、つかむだけで何も出来なかった。

殴るとかそういう事はしたことないし・・・・。それに・・・相手の方が強そうだ。

「ぼっちゃんは大人しくしてろ」

赤髪はそう言って「くくく」と笑った。

「よし、そこの女、剛塚に電話しろ」

赤髪が言ったのはくるみの事だ。

「で、でも・・・」

「でもじゃねーよ。早く電話してここに呼べ。グズグズしてんとひっぱたくぞ」

くるみ・・・。

ぼくは自分の携帯を取り出した。

「ぼくが電話するよ。だからくるみに手を出すな。それに未華からも牧野からも離れろ。そしたら電話する。番号はぼくしか知らないんだ」

ぼくは声が震えないように気をつけて言った。

もちろん番号をぼくしか知らないなんて嘘だ。

すると、赤髪は他の生徒に牧野と未華から離れさせた。

「離れさせたぞ。電話しろよ。オレの名前を言えばわかる。安西だ」

とりあえず、くるみに害が出ることは無くなったかもしれない。

あとは剛塚に電話するしかない。

ぼくは剛塚の番号を押した。

『はい、剛塚だけど』

剛塚はすぐに出た。

ぼくはすぐに言った。

「安西って人が剛塚くんを捜してる。早く家に帰っちゃって、危なそうだから」

『安西・・・』

そしてぼくは電話を切って、くるみの手をとった。

「逃げるよ!」

「え・・・」

ぼくはくるみを引っ張るようにして走り出した。

「あ!テメエ!」

赤髪が追いかけようとした瞬間、牧野が大声を出した。

「カツアゲだーー!!」

牧野はそう叫んで未華と一緒にぼくらの反対方向へ走りだしていた。

ぼくらが走りだして数秒、赤髪たちは立ち尽くした。

たぶん「カツアゲだー」と大声出されて一瞬怯んだからだ。

しかしすぐに赤髪と二人はぼくらの方に走りだした。

「こっち来た・・・!」

ぼくはくるみの手を握ったまま駅前めがけて走った。

駅前まで行けば人がたくさんいるはず!

それなのに・・・・それなのに・・・・

駅前に着く前に、剛塚がこっちに向って歩いていた。

 

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2008年11月14日 (金)

空の下で.嵐(その3)

走った。

いつもの練習で走るとは違う。

フォームも何もないし、無我夢中だったけどくるみの手を引いていた。 

ぼくとくるみは剛塚がいるところまで走った。

「剛塚、なんで駅から戻ってくるんだよ」

剛塚が危なそうだったから電話で「家に帰れ」と言ったのに。

「相原、若井・・・大丈夫か」

息切れしながら走ってきたぼくとくるみの事を気にしている。

危険が迫っていそうなのは剛塚だってのに。

「剛塚くん・・・なんか安西って人が・・・怖くて、あ、そうじゃなくって・・・捜してた」

急に走ったせいか、少し怖い目にあったせいか、くるみは気が動転してるみたいだ。

「あ、相原くん、ご、ごめん」

くるみはそう言ってぼくが掴んでいた手を指さした。

「あ!い、いや、ぼくこそゴメン・・・」

ぼくは慌ててくるみの手を放した。

くるみの手って・・・やわらかい。ぼくよりあったかいし・・・。

は!?

い、今はそれどころじゃないや。

赤髪の学生、安西と二人が走ってくるのが見えた。

マズイことにここは路地みたいなとこで人気がない。

「ど、どうする剛塚!」

「相原と若井は後ろに下がってろ。オレが安西たちと話をする」

安西たちが接近してくる。

「剛塚だ!」

男子生徒のうちの一人がそう叫んで、走った勢いそのまま剛塚に殴りかかってきた。

だが、剛塚はそいつの拳をかわすと、その腕を取って背負い投げをくらわせた。

「うわあ!!」

あっけにとられるぼく。

しかし思う。体育部員が暴力沙汰はマズイと。

「ご、剛塚!ぼ、暴力はヤバイって」

ここで安西が到着。もう一人も着いた。

「安西・・・何の用だよ」

剛塚は安西を睨んでそう言った。やはり知り合いなのだ。

「剛塚。さっきたまたま競技場でお前を見つけたからよ。冬の時の恨みを晴らそうと思ってよ。あの時のメンバー集めたんだよ」

あの時・・・?

「そうだと思ったよ、安西。お前がオレにすることなんてそれくらいだしな。それに、さっき競技場にお前がいたのを見かけたしな、嫌な予感はしてたんだ」

状況が全くわからない。

「ご、剛塚。この安西って人・・・誰なの」

ぼくが聞くと剛塚は少し間を空けてから答えた。

「友達だよ。中学んときの」

「中学の時の友達・・・」

そして、また間を空けて変な事を言い出した。

「一緒に陸上部つぶしを計画した仲間だ」

「え?」

 

牧野と未華は、ぼくらと反対方向へと走って逃げていた。

しかし誰も追いかけて来ていないと判ると、走るのをやめて五月先生に電話をした。

『おかけになった番号は・・・電波の届かない場所に・・・』

「くっそ、出ないし」

「牧野、留守電になんか入れておきなよ」

「わかってる。ピーって言ったらな。あ、言った!

 ・・・・もしもし先生。牧野ですけど。ちょっと緊急な事が起きてるんです。

 留守電聞いたら連絡ください。牧野です。牧野です」

「牧野、なんか気が動転してるでしょ。お、おち。おち落ち着きなよ」

「未華もな」

二人がやりとりしていると、そこへ雪沢先輩と穴川先輩がやってきた。

「あ、先輩・・・・・」

「お、どうした牧野、大塚。アタフタしちゃって・・・密会中?」

「違います」

未華はピシャリと答えた。 

牧野は一瞬、今の状況を話すべきかどうか迷った。

先輩二人を巻き添えにするのはどうかなと考えたからだ。

でも、牧野は雪沢先輩に状況を話した。

「・・・ってワケなんですよ。たぶん安西ってのは英太たちを追っかけてって・・・」

「あ、安西・・・ってまさか・・・」

雪沢先輩は穴川先輩の顔を見た。

穴川先輩はうなづく。

「たぶん、あの安西だろ。剛塚を呼んでるんだから。相原と若井を捜そう」

珍しく穴川先輩がその場を仕切った。

「牧野、大塚。お前らは人通りの多い通りに出て駅に向かえ。路地とかには行くなよ」

そう言って雪沢先輩と穴川先輩は牧野たちが来た方へ向かった。

 

後から考えてみて・・・。

やっぱりここで先輩が関わるのは止めておいて方が良かったのかもしれない。

牧野が一瞬躊躇したのは、感がよかった。

それでも雪沢先輩と穴川先輩が関わる方に動いてしまった。

このことが、まさかあんな事態を引き起こそうとは・・・。

 

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2008年11月18日 (火)

空の下で.嵐(その4)

ザーっと大きな音をたて、落ち葉が群れをなして風に流れていく。

それと同時に雪沢先輩と穴川先輩、そしてどこで合流したのか名高が走ってきた。

この、人通りの少ない路地に、ぼくとくるみ、そして剛塚がいる。

剛塚の足元には一人、男子学生が「うう・・・」と呻いたまま仰向けに倒れていて、その向こうに安西ともう一人の男子学生。

さらに向こうに雪沢先輩・穴川先輩・名高というひしめきようだ。

 

「安西・・・」

雪沢先輩がつぶやいた。

「安西、なんでキミがまたオレ達にからむ・・?」

また・・・?

本当に安西と剛塚は「陸上部つぶし」を計画してたって事か?

ぼくは剛塚の顔を見た。すると剛塚は渋い顔をしてうなづいた。

「悪い、相原。今まで黙ってて。オレと安西とあと何人かで陸上部をつぶしにかかったって話は本当だ。中学3年の時の話だけどな」

ぼくは頭がクラッとした。

「い、意味がわからない。中学の時、なんで多摩境高校の陸上部をつぶしに・・?」

この問いには安西が答えた。

「邪魔だったんだよ」

「は?」

「オレらの中学は多摩境高校から近い。オレらは学校帰りによく小山内裏公園で隠れてタバコとか吸ってたんだけどよ」

小山内裏公園・・・。

ぼくらがよく練習で行く公園だ。

「毎日毎日練習で来てる陸上部に、何度も何度もタバコを見られててよ。

 ある時、チクられたんだよ。中学の先生によ。おかげでこってりしぼられてよ」

「中学に連絡したのはオレだ。目に余ったし、煙が邪魔だったし」

雪沢先輩が痛そうな顔して言った。

「そして、あの日だよ・・・」

安西はニヤついて話す。本当に嫌な笑みだ。

「オレと剛塚とあと3人くらいで、小山内裏公園で練習中の陸上部にからんだんだよ。

 全員を何発か殴って脅そうってことでな。雪沢ってのを徹底的にやる予定だった」

安西は雪沢先輩を睨む。

「なのによ・・・。あんなバケモノが出てくるなんてな」

「バケモノ?」

「お前らんとこの顧問だよ。五月とかいう。なんなんだよ、あいつは一体」

五月先生・・・?

「あいつ一人に、オレも剛塚もほかのヤツもやられちまったんだからよ・・・」

ぼくの頭の中で何かがつながった。

前に聞いた話じゃ、五月先生は不良中学生と乱闘騒ぎを起こして謹慎してたって事だったハズだ。

それに・・・五月先生が謹慎明けで登場した時・・・

剛塚と五月先生はお互いの事を知ってる風だった。

「じゃ、じゃあ五月先生が乱闘した相手ってのはまさか・・・」

「オレ達だよ」

剛塚がそう断言した。

でも、たった一つ、ふに落ちない点がある。ぼくはそれを聞いた。

「じゃあなんで・・・剛塚は多摩境高校に陸上部に入ったの?」

場に沈黙が流れる。

安西もこれを聞きたいらしく黙って剛塚を見ていた。

「・・・。五月に言われたんだよ」

「何をだ」

安西が早口でそう問い詰めた。ものすごい険しい顔で剛塚を見ている。

対して剛塚はつまらなそうな顔して答えた。 

「暴れるようなエネルギー、もっと違う事に使えばスゲェ男なのにってよ」

「そ、それだけかよ」

安西は絶句した。

「おまえ、それだけで、オレ達と一緒にいるのやめて・・・大山とかから金を巻き上げるのもやめて・・・陸上なんか始めちまったのかよ・・・」

大山・・・。そうか、剛塚と大山は同じ中学だとか言ってた。

「剛塚、テメェ一人だけ普通の高校生やってこうだなんて許さねーぞ。オレ達はいまだにレッテル張られたまま学校行ってるんだからな!」

そう言って、安西が剛塚に殴りかかってきた。

剛塚はなんとかかわしたが安西はすぐに次々と拳を放ってくる。

剛塚は避けたり、受けたりするだけだ。

「どうした剛塚!なんで反撃しねーんだよ!」

「暴力は今は出来ない!部に迷惑かかるからよ!」

さっき一人を投げ飛ばしたけど・・・と思った時、雪沢先輩が安西を後から押さえた。

「やめろ安西!」 

「またテメェか、雪沢!ジャマすんな」

安西は雪沢先輩の腕を振り払って、雪沢先輩の腹に蹴りを入れた。

その勢いで雪沢先輩は後に飛ばされて倒れた。

「うぐ!」

倒れる時、雪沢先輩は足首をひねる様な格好になった。

そして倒れたあと、雪沢先輩は足首をおさえて痛そうな顔をしていた。

「ゆ・・・雪沢! 安西、おまえ!」

それを見て穴川先輩は安西に向かって殴りかかった。

「あ、穴川先輩!殴るのは・・・」

ぼくはそう叫んだ。

もう、収拾はつかないのか??絶望的な叫びだった。

 

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2008年11月21日 (金)

空の下で.嵐(その5)

「わあああ!!」

くるみの悲鳴が上がった。

穴川先輩が安西に殴りかかる。

「穴川先輩!ストップ!!」

強風の音、悲鳴、ぼくの叫び声、枯れ葉が吹き飛ぶ音、全て一瞬止まった。

穴川先輩の動きも止まった。

いや、止められた。

名高が後からしがみついて止めたのだ。

「ヤバイっすよ!殴るのは!絶対ヤバイ!問題になりますって!」

「放せ名高!雪沢がケガさせられたかもしれねーんだ!放せ!」

すると安西は高笑いをした。

「ギャハハ!バカじゃねーの?殴りかかってきたって、オレはやられねーよ」

安西は再び剛塚の方を見た。

そしてもう一人の男子学生が穴川先輩ににじみよっていく。

それを見て剛塚はぼくに言った。

「相原、お前は若井を連れて駅前まで逃げろ。そんで一応警察呼んで来い」

警察・・・。

頭から血の気が引いてきた。

ぼくらは練習をしてただけなのに、なんでこんな事に・・・。

くるみの顔を見ると、相手を睨んでいる。

逃げる気とか無い。なんにも力になれないハズなのに目だけは相手を見ている。

ぼくもタダで逃げるわけには行かない。

せめて、さっきみたいに全員がうまくこの場から離れられる作戦を考えなくちゃ。

「じゃあ今度こそ行くぜ、剛塚」

安西が再び剛塚に殴りかかろうとしたその時だった。

 

「やめんか!!!」

 

辺りの音全てを吹き飛ばしそうな程の怒号が飛んできた。

声はぼくの後ろの方から聞こえた。

そっちを振り返ると・・・五月先生が立っていた。

「やっと・・・見つけた」

「さ、五月先生。なんでここに?」

「牧野から留守電があってな」

五月先生はぼくの肩をポンと叩いて言った。

「もう平気だぞ、相原、若井」

そして剛塚にも肩も叩いて言った。

「殴ってないみたいだな。よくまあ我慢したなあ剛塚」

そして五月先生は安西を見た。

「お前か、安西」

声色が変わった。

いつもの五月先生の声じゃない。声を聞いただけで寒気がするような迫力だ。

安西は五月先生に向かってニヤけて言った。

「殴るのか?教師が学生を。今度は謹慎じゃ済まないんじゃねーのか?あ?」

「なら教師辞めればいい」

「は?」

「目の前で自分の生徒が危ない目に遭ってるんだ。守ろうとしなかったら教師じゃない」

「な、なにドラマみてーな事言ってんだ。学園青春物の見過ぎだぜ。主演俳優かよ」

「オレは普段よー」

「あ??」

「自分から動くような事はしない。だけどよ・・・相手から殴りかかってくるのなら・・・話は別だぜ?安西。例え教師生命にかかわろうともな」

「く・・・、お、おまえ・・・アタマいかれてんじゃねーのか?」

「褒め言葉だな」

やりとりを見て、もう一人の男子学生が言った。

「やっちまえよ安西!教師殴るくらいなんでもないだろ」

すると安西は言った。

「お前・・・忘れたのか?五月の・・・強さを」

剛塚と安西と数人の生徒を一人で倒したという五月先生・・・。

「コイツ・・・高校時代はこの辺じゃ有名な不良だったらしいしな」

そうなんだ・・・。

なんだか納得な感じだ。迫力あるし。

安西は髪をくしゃくしゃにいじりながら言った。

「帰るよ」

そう言ってこの場を去ろうとした。

「待て安西」

去ろうとした安西に剛塚は言葉をかけた。

「なんだよ剛塚。裏切り者の話なんて聞きたくねーよ」

「お前も・・・。そのエネルギー、他の事に使えよ」

安西はキョトンとした顔をした。

「安西、お前だって何かやればスゲエのかもしんねーぜ」

「なんだよソレ・・・じゃあお前は陸上やってスゴクなったのかよ。今日だってビリの方を走ってたじゃねーかよ」

剛塚は黙ってしまった。

だからかわりにぼくが言った。

「スゴクなりつつあるよ。ね、剛塚」

すると剛塚ニヤっと笑いながら言った。

「当り前だ」

それを見て安西は「くそ」と言って歩いて行った。

それに他の男子学生二人もついて行った。

それと同時に雨が降り出した。 

 

これでとりあえず一件落着なのかとぼくは思った。

でも次の日の朝、電話で五月先生から衝撃の知らせがあった。

安西に蹴り倒された雪沢先輩の足首は捻挫していて・・・・

走るのは2週間ダメだというのだ。

駅伝大会までは3週間を切っているのに。

 

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2008年11月25日 (火)

空の下で.嵐(その6)

翌日は暴風だった。

台風は静岡県の南の海上を東北東へ進んでいて、午後には多摩境高校のあるエリアも強風域に入るということだった。

おかげで今日の授業は午前で打ち切りになった。

 

教室からは昼ごはんを食べずにみんなが帰っていく。

「おーい、英太ー。帰らないのかー?」

吹奏楽部の日比谷がハイテンションな声を上げていた。

「英太、雨スゲエよ。マジで。スッゲスッゲ!はよ帰ろうぜ」

「ごめん日比谷。ちょっと部室でミーティングがあるんだ」

「こんな日にか?!スッゲーな。帰り気をつけろよ」

そう言って日比谷は教室から傘をさして歩いていった。

どっかの先生の怒鳴り声が聞こえる。

「コラー!屋内で傘さすなー!」

そりゃそうだ。

 

部室に行くと、もう長距離メンバーは全員集合していた。

みんなで円を描くように座っている。

一様に黙っているので輪に入りにくかったけど、ぼくも円に混じった。

そこへ五月先生がやってきた。

先生も円に混じって座る。

「待たせたな、みんな」

五月先生は座るなりイキナリ本題に入りだした。

余計な話題をしている時ではない。

「朝、みんなにも電話で話したが、昨日、乱闘騒ぎがあった」

大山と早川舞以外のメンバーは全員が騒ぎに関わっている。

「いざこざの末、相手の生徒は手を引いて帰っていったんだが、また何かしてくる可能性もある。これからしばらくは練習後はみんなで帰るように」

「いや、多分もう何もしてこないっすよ」

剛塚は下を向いて言った。

「安西は一度イチャモンつけたら途中でやめるようなヤツじゃなかった。なのに昨日は途中であきらめて帰っただろ。五月先生がまだ陸上部の顧問やってるのがわかって手を引いたんだよ。あいつ・・・相手の強さは見極められるヤツだから・・・」

「そうか」

ぼくらは少しホッとした。

またあんな不良漫画みたいな目にあうのはコリゴリだからだ。

「スマネエな、みんな」

剛塚はそうつぶやいた。

「オレがいるからあんな事になったんだ。ほんとスマネエ・・・」

「お、おまえが謝るなよ」

牧野がそう言って続けた。

「おまえが陸上部つぶそうとしたのは中学んときだろ。もう昔の話じゃんかよ。悪いのは安西だよ。今だに根に持ってるなんてよ」

「いや、謝るよ。原因はオレだ。オレもこの陸上部から手を・・・」

「手なんか引かなくていいよ」

剛塚が言い終わる前に大山が割り込んだ。

「剛塚くんはもう悪くないよ。確かに中学の時はぼくも嫌だったけど・・・。今はもうそんなの関係ないよ。ね、英太くん」

なんでぼくに振るのかわからいけど、ぼくは言った。

「そうだよ。スゴクなりつつあるって言ったじゃん。それに人数がこれ以上減るのはマズイでしょ。ねえ先生」

ぼくは五月先生に話題を戻した。

「そうだぞ剛塚。お前が何か罪悪感みたいなの感じてるのなら走ってそれを吹き飛ばせ。駅伝大会は近いんだからな。それに・・・」

五月先生は雪沢を見た。

「雪沢が昨日の騒ぎで捻挫した。走れるようになるまでは2週間かかるということだ。しかし駅伝大会までは2週間と4日。事実上、雪沢は出場できないだろう」

雪沢先輩は拳を握りしめていた。

しかし、少しすると力を緩めて名高を見た。

「名高、悪いけど・・・一区は頼むぞ」

ドキッした。

何故なら雪沢先輩の声が震えていたからだ。

ぼくはなんとなく雪沢先輩から目をそむけてしまった。

思わぬ形で名高がエース区間を走ることになった。

でも名高は意欲全開って感じだ。

「でも先生。オレが一区だとしても、あと穴川先輩・英太・牧野・剛塚・大山だけじゃメンバーが一人足りないッスよ。どうすんですか」

そう、六人しかいない。駅伝は七人で走る。どうしてもムリだ。

「アタシが走ろうか!男のカッコして!」

未華の無茶な提案にみんなが失笑した。

「な、なによ。アンタたちより早いっての」

「そういう問題じゃなくって・・・まあ確かに男に見えなくもないけど・・髪短いし気強いし」

そう言ったのは牧野だ。

未華に思いっきりひっぱたかれた。音がすごかった。

「い、いでえーー!やっぱ男かも・・・あ、いや、うそうそ!」

騒ぐ牧野と未華をほったらかして雪沢先輩は五月先生に言った。

「でもどうすんですか先生。足りないならオレが短い区間をゆっくり走ってもいいですよ」

「いや、お前は治療に専念しろ。助っ人は呼んだ。あいつしかいないだろ」

「あいつ・・・?」

そこへ「失礼しまーす」と言って、そいつは部室に入ってきた。

そいつを見て、「ああ、そうか」とみんなが思った。

確かに短い区間ならこれ以上の助っ人は考えられない。

「おお来たか、天野たくみ」

そこには照れ笑いするたくみが立っていた。

 

 

嵐編 END → NEXT 駅伝編

 

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2008年11月27日 (木)

嵐編、描き終わりましたー!

嵐編が書き終わりました。

 

一言で言うならば「なんじゃこりゃ?」的な仕上がりでした。

直そうと思いつつもドコをどう直せばいいのか全くわからず・・・。

まあこれが実力ということでしょう。結局あえて直さずに掲載しました。

誰か文章教えてくれ!!(笑)

 

今回はケンカみたいなシーンがありました。ケンカ中にもかかわらず会話が多くて

なんだか変な感じでしたけど、実際に他校の生徒にからまれた時って

実は会話って多いんですよね。

 

ぼくは当時はガラのよくない工業高校にいたせいで、他校の人に何度かからまれました。

ヒドイ時は、友達がイキナリ後ろから鎖で首を絞められて、人質になってしまい。

「ついてこい。」

と言われデパートのトイレまでぼくも連れて行かれ、

「お前らの学校に恨みがある」的なことをずいぶん長い時間話され、

そこへ警官が数名突入してきて、相手が捕まる・・・という事がありました。

ぼくらも相手も取り調べを受けましたよ。

 

その他にも「ある駅」ではぼくの高校と仲の悪い高校が、何度も何度もからんできたり。

 

信じられないことに不良漫画みたいな事って実際にあるんですよ。プチ抗争みたいな。

バイクで校庭に乗り込んできたり、待ち伏せがあったり。

 

ぼくも英太たちのようにケンカなんて関係ない生活でしたから迷惑な事でした。

まあ、いい思い出ですかねぇ。

 

さて、「空の下で」はいよいよ駅伝大会が始まります。

物語の山場となる大会になります。

英太・牧野・剛塚・大山・たくみ・名高・穴川。

彼ら七人の戦いの行方は、はたして・・・・・。

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2008年11月28日 (金)

空の下で.駅伝(その1)冷たい風

ぼくらにとって、嵐のような二日間が過ぎ去った。

上柚木陸上競技場でエース区間の走者を決めるタイムトライアルをしたのは、つい二日前の事だ。

 

雪沢先輩と名高の勝負は雪沢先輩に軍配が上がり、その帰りに安西たちにからまれ雪沢先輩が捻挫をした。

そして昨日、かわりに名高が一区を走ることになり、助っ人としてたくみが登場した。

全てたったの二日間の出来事だ。

 

台風は過ぎ去り、あの嵐がまるで違う世界の出来事だったかのような秋晴れがやってきた。

空は澄み渡り、いつもなら見えないくらい遠くの景色までがクッキリと見えていた。

学校の教室から見える南の山々を見ては「世界って広いなあ」なんて思ってみたりする。

逆に、近くを見れば緑一色だったはずの校庭や近くの森の木々が一部だけれど黄色やオレンジ色にかわって来ている。

「秋だなあ・・・」

授業中にもかかわらず、ふとつぶやく。

すると周りの女子がプっと吹き出す声が聞こえた。あー、いけない。独り言言ってた。

 

今日は部活は休みだ。

授業が全部終わって、カバンを持って教室を出た。

せっかくの秋晴れだし、外に出て思いきり走りたいところだけれど仕方ない。

それにしても、ぼくっていつの間にこんなに走るのが好きになったんだっけ。

なんとなく入部して、なんとなく長距離に所属しただけだったのに。

「お、相原。どうした、早く帰らないのか」

廊下をのんびり歩いてると五月先生に声をかけられた。

「あ、もう帰ります」

「そうだよ。たまには休んでおけ。駅伝まで2週間、ミッチリ練習があるんだからな」

「ミッチリですかぁ・・」

キツそうな言い方だけど、ぼくはワクワクしていた。

雪沢先輩があんな事になったのは悔しい出来事だけれど、駅伝のアンカーを走るという大役を任されたのはテンションアップだ。

「ミッチリでも頑張りますよ」

ぼくはガッツポーズをとって見せた。

「ほおー、たくましいことだ」

五月先生は感心する言葉を言いつつも笑ってた。

「五月先生。ここにいましたか」

誰かが先生を呼んだ。呼んだのは歳をとった先生・・・校長先生だ。

「あ、夢山校長。お疲れ様です」

五月先生は校長先生に頭を下げた。校長はぼくの顔を見た。

「えーと、彼は?陸上部の生徒かね?」

先生のかわりにぼくはハキハキと答えた。

「あ、はい。陸上部一年の相原英太です」

「ああ、君が相原くんか」

ん?なんで校長がぼくの名前を知ってるんだ?

「すると、キミが最後の運命を握ってるということだね」

「最後の運命?」

ぼくがそう言うと五月先生が少し冷たい声で校長につぶやいた。

「校長。そういう言い方はよしてください。50位の話はまだしてないんですから」

「え、先生。50位ってなんですか」

ぼくが聞くと五月先生は「あ」とつぶやいた。

おまけに「やべ」とか「あちゃー」とか言う始末だ。

「五月先生、相原くんにはプレッシャーになるかもしれんが、いずれわかる事だ。早く部員たちに言ってあげた方がいいよ」

校長は優しい声でそう言ったが、ぼくには何の話だか全くわからない。

「う、うーむ」

五月先生は廊下の天井を見上げてうなった。

うなった末にぼくの方を見て言った。

「よく聞け相原。みんなにも話すが、せっかくここにいたんだから今教えてやる」

「は、はい」

なんだかまた嫌な感じがしてきた。

「二日前の騒ぎ・・・。あの場所の近くの住民から学校に通報があったんだ」

秋晴れの空気に変化が起きる。やはり晴れは長く続かないのか。

「多摩境高校の陸上部が『また』騒ぎを起こしているってな」

騒ぎは起こしたのではなく、起こされたのだけれど。

「騒ぎばかり起こす部なんて無い方がいいんじゃないのか、とまで言われた。オレと校長先生は頭を下げ、謝ったんだがどうにも引き下がってくれなくてな。どうしたら引き下がってくれるのかと聞いたところ・・・。ちゃんと部活動で精進してるところを見せろというんだ」

「え、もしかして、その・・・」

「そう、ならば証拠として駅伝大会で50位内に入るって話になったんだ」

ここで校長先生がぼくに話しだした。

「すまん相原くん。クレームをつけてきた人は役所の方でね・・・。キチンと部活動として取り組んでる証拠を見せないのなら教育委員会に騒ぎの事を報告させてもらうと言って来たんだよ。しばらく陸上部を活動停止にして様子を見てほしい、とね」

「活動停止?」

「そう。しかし駅伝大会前にそれはあんまりだ。ということで苦渋の判断で駅伝で50位内に入るという条件を出して、飲んでもらったんだよ」

ぼくは五月先生を見て聞いた。

「せ、先生。駅伝大会には何校が出るんですか」

「都内全域から118校が出る」

「ひゃ・・・118校も!?」

ぼくら多摩境高校は発足して2年半、一度も駅伝大会には出ていない。

初出場でイキナリ半分以上の順位を求められてるのだ。

「だ、大丈夫だ相原。そんな気にすんな。なんとかなる順位だ」

でも、なんとかならないと陸上部は活動停止になってしまうわけで・・・。

 

あの騒ぎで起きた風は、冷たい試練の風となってぼくらの前に立ちふさがった。

 

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