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2009年12月21日 (月)

サンタが高校へやってきた 第4話

第4話「雪だるま」

 

 ガサツな男の子って嫌いだ。

 例えば自分の部屋を全然掃除しない人とか、教室の机の上に前の授業の教科書を出しっぱなしな人とか、毎日同じ靴で登校してくる人とかは嫌いだ。特に嫌いなのは乙女心を全く考えずに発言を繰り返す男子は本当に嫌いだ。近づきたくもない。

 でもクラスのほとんどの男子はそんな感じだ。だから私はいっつも女子グループとだけ行動している。部活も女子率の高いハンドベル部に所属している。顧問の立花先生は20代のかわいい先生で、話も知的な感じなので好感が持てたので入ったんだ。

 いつもは授業を終えればすぐにハンドベル部の練習をしに行く。わずか八人の小さな部だけど、それはハンドベル部が今年発足したばかりだからだ。立花先生は吹奏楽部も掛け持ちで教えているけど、私達ハンドベル部の事も決しておろそかにはしない。それに今年のクリスマスには、南大沢のアウトレットモールで「ハンドベル・ミニコンサート」をする予定なので練習も佳境だ。

 ところが今日は部活は休みで、しかも男子と二人で視聴覚室に来ている。別にデートじゃない。何しろ一緒にいるのは平井川将生くんという、ガサツな男子だ。こんな人とは絶対絶対付き合わない。

 

 

「おい、本当にここなのかよ優衣」

 二人で視聴覚室に入ると平井川くんは、私の下の名前を使った。下の名前で呼ばれるほど親しい仲じゃあないと思うんだけど、とにかく私は答える。

「ここだよ。ここにいたらしいよ」

「サンタが?」

 嫌な笑みを浮かべて私を疑いの目で見る平井川くん。完全に信じてない表情だ。

「優衣さ、お前本当にサンタがいると思ってる訳?しかも視聴覚室に」

「サンタが存在するとか、そういう話じゃなくてさ。なんで視聴覚室でサンタが目撃されたのかって気になるって事だよ」

「そりゃ、お前、あれだよ」

「どれ?」

 平井川くんは少しの間、難しい顔をして何かを考えたかと思うと「わかった!」と声をあげた。

「なに?」

「ピザ屋の店員だよ!ピザ屋って、この時期になるとサンタの格好したりするじゃんか!」

 私は思わず「えーと、それで?」と冷たい声を出してしまった。

「だからさ!誰か、先生がピザを頼んだんだよ!で、デリバリーでサンタの格好をして店員が視聴覚室まで届けに来た。それで間違いないんじゃないかな」

 自信に溢れた表情で平井川くんは早口で言った。いちいち声が大きいけど、まあそれはいいとしよう。私、声が大きい人ってあんまり好きじゃないんだけどね・・・。

「ピザ屋さん、こんなとこまで配達に来るかな」

「配達じゃねーよ、デリバリーだ」

「そ、そう」

 私はちょっと納得出来ずに、視聴覚室を見まわした。普通の教室と同じくらいの広さの部屋に天井から吊り下げるロール式のスクリーンと、ちょっと高そうなスピーカーがセットされている。それを見る角度で、普段の教室より少しグレードのいい机と椅子が置かれている。ここで資料の映像とかを見るんだ。

「おい、優衣、謎も解決したんだし、解散にしようぜ」

 平井川くんは早く帰りたそうだ。別に帰ってもらってもいいんだけど、何かサンタのヒントを見つけた時には、色々と平井川くんに調べてもらう事もあるかもしれないから、一緒に行動してもらいたい。なんといっても、サンタはともかく茶色の獣とかが現れたら怖い。私は怖いのは嫌いだ。

 視聴覚室を一周回ってみると、部屋の隅にダンボールが置かれているのが目に止まった。ダンボールはすでに開けられていて、中にはカラフルなスズランテープやクリスマスツリーの飾り付けらしきものが入っていた。

「クリスマスパーティーでもするのかなあ」

「そうか!わかったぞ!」

 平井川くんがまた大声を出す。

「誰かがこの部屋でクリスマスパーティーを企画してるんだよ!それでサンタの格好をしてみたんじゃねーのか?」

「茶色の獣は?」

「それは体育館裏の話だろ?別件だよ。もし同じ話だとしたって、ソリを引っ張るあいつだよ。何だっけあいつ」

 平井川くんは天井を見上げながら考えるので、私は「トナカイ」と言った。

「そう!トナカイだ!つじつま、合うだろ?」

「じゃあ、屋上にいた西洋風のドレスの女の人は?」

「サンタの奥さんだ」

 自信ありげな表情だ。むりやりな推理だ。でも、確かにクリスマスパーティーってセンはいいとこ行ってる気がする。この視聴覚室は、先生に頼めば放課後は自由に使えるって聞いた事あるし。

 

 

 私と平井川くんが視聴覚室を出ると、廊下の先に気配を感じた。そちらに目をやると、廊下の先の方に、夕日に照らされた人影が見えた。白くて丸い人影だ。

「ん・・・?」

 平井川くんも気配に気づき、そちらに目をやる。そこには雪だるまがいた。

「雪・・・だるまだ」

 私と同じくらいの背丈の雪だるま。もちろん雪で出来てるわけではなさそうだ。距離があるからよくわからないけど、何かヌイグルミみたいな感じだ。

 その雪だるまは突然、私達と反対の方向に走りだした。

「あ・・・逃げた」

 のんきにそう言う平井川くんに私は叫んだ。

「追いかけてよ!」

「な、なんで?」

「なんだか気になるでしょ!捕まえてよ!」

「なんだよくそ!!」

 そういう汚い言葉を吐いて平井川くんは雪だるまを追って走っていった。

 

 

 ほんの数分すると平井川くんは歩いて戻ってきた。その間、私は何故か少し怖かった。うす暗くなった夕方の学校は少し怖い。というか、私、怖がりなんだよね・・・。一人で取り残されるのは怖い。だからこうして、気になる事があって調べる時も、必ず誰かと一緒に行動する。正直な話、茶色の獣に一人で遭遇したら、たぶん泣く。

「ど、どうだった?雪だるま、追いつけた?」

 すると平井川くんはつまらなそうな顔をして答える。

「いや、まかれた」

 そう言ってため息をついた後、変な事を言い出した。

「なあ、優衣。この件、ちょっと手を引こうぜ」

「え?な、何で?」

「いや、オレ、この件、関わりたくないや。なんつーか・・・調べたくないんだよ」

 平井川くんは何故だか目を逸らして呟いた。これまで、平井川くんとは妙な事を色々と調べてきた事があるんだけど、こんな途中でやる気を失ったのは初めてだった。一体どうしたんだろうと不思議に思う。

「だから優衣さ、お前もこの件からは手を引けよ」

 そう言う平井川くんはいつになく真剣な表情だった。私は気圧されして、頷いてしまった。

 

 

 

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