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2009年12月22日 (火)

サンタが高校へやってきた 第5話

第5話「おかしな態度」

 

 私が通う多摩境高校の最寄り駅、多摩境駅前にも規模は小さいけれどクリスマスイルミネーションが輝いていた。今年はエコが大きく取りざたされているので、LEDっていう省電力のイルミネーションが数多く飾られている。

 もうクリスマスまではあと三日だ。クリスマスが誕生日である私にとっては、あと三日で15歳も終わりという事だ。でも私は早く20歳になりたい。大人になれば色んな事を自分の力で切り開いて行ける様な気がするからだ。とはいえ、今の高校生活も悪くはないけれど。

 私は入学してすぐに立花先生が立ちあげたばかりのハンドベル部に入部した。別にハンドベルに興味があった訳ではなかったのだけど、人とは違う珍しい事をやりたいと考えていたので、あまり聞かない名前の部に入る事にしたんだ。

 ハンドベル部には八人が入部した。全員が女子だ。立花先生も女性なので「女子会だね」と先生は笑っていた。

 部の練習は週に二回だけだ。火曜と金曜に音楽室を使って三時間くらい練習する。最初は全くハーモニーにならなかったけど、夏にはそれなりに聴ける様になり、十月には吹奏楽部の定期演奏会のワンコーナーにゲスト出演させてもらえた。

 ハンドベルの音色が一番聴かれるのはクリスマスの時期だ。私達も明後日の24日に、南大沢のアウトレットモールでミニコンサートを行うので、今日も遅くまで音楽室に籠っているという訳だ。

「じゃあ、今日の練習はここまで。明日はサイレント・ナイトの合わせをするから譜面を忘れないでね」

 立花先生の言葉でこの日の練習も午後七時で終了となった。ハンドベル部はどんなに遅くなっても七時を回る事は無い。私はクラスメイトでもある仲のいいミクちゃんと一緒に帰る事にした。

 

 

 ミクちゃんと二人で、音楽室を出て廊下を歩く。廊下には暖房が入っていないので寒い。「冷えるねー」とか言いながら、校舎の出口へ向かって歩いていると、視聴覚室に灯りが点いているのが見えた。

「あれ、こんな時間に視聴覚室で何してんだろ」

 私がそう言うとミクちゃんは少し困った表情をして「さあ。それより寒いから早く帰ろう」と言った。

 私は、こないだ視聴覚室で見つけたクリスマスパーティーの準備みたいな道具たちが気になっていた。聞いたところによると、どこの部でもそんなパーティーの企画は進んでいないらしい。それに、あの時に姿を現した「雪だるま」を追って行った平井川くんも、あの直後から私を避け始めていた。昨日も廊下で話しかけたら「オレ、忙しいから」と逃げられた。

「優衣、優衣。聞いてる?」

 ミクちゃんに二度も名前を呼ばれて、はっとして「え?なに?」と聞く。

「明後日のミニコンサート、頑張ろうね」

 そうだよね。今はミニコンサートの方が大事だよ。「うん、もちろん」と答える。

 廊下を進んでいると、女子トイレからクラスメイトの凛ちゃんが出てきた。

「あ・・・」

 凛ちゃんは何故だか顔をしかめた。それを見てミクちゃんも「ああー」と変な声を出した。

「あれ?凛ちゃん。今日は演劇部の練習、お休みじゃなかったっけ」

 私がそう言うと凛ちゃんは少し間を空けてから女の子らしからぬ低い声を出した。

「はっはー!今日は特別練習日なのだ!!さらば!!」

 何の役なのか知らないけど、なにかの役に成り切ったらしい凛ちゃんは廊下を駆け抜けて行った。

「変なの・・・」

 みんな、部活で忙しいんだな。私はそう思ってミクちゃんと二人で帰る。

 

 

 次の日、登校中の電車の中で、女子バスケ部のマキちゃんと同じ車両になった。マキちゃんとは中学からの友達だ。活発なマキちゃんにはいつも元気をもらえる。

「あ、おはよー、優衣!」

「おはよう。マキちゃん、今日も朝から元気だね」

「うーん、そうでもないよ。昨日はちょっと眠れなくてさ」

 言われてみればマキちゃんの目には少しクマが出来ていた。せっかくにかわいい顔が台無しだ。

「どうかしたの?」

 それでも元気なマキちゃんはハキハキとした声で答える。

「昨日の夜、体育館裏で、また見たんだよ」

「え・・・茶色の獣?」

「そう。それに、雪だるまみたいなヤツもいた。アタシに気がついたらしくて、目が合った途端に逃げ出して行ったんだけどさ・・・、こっちが逃げたかったよ。あんな暗いところで、あんな異様な連中と遭遇してさ・・・。で、夢に出てきて眠れなかったんだよー・・・アタシってば意外と乙女」

「雪だるま・・・」

「そうだよ。なんかうす暗くってよくわからなかったけどね。雪だるまの等身大ぬいぐるみを着た感じのヤツだよ。獣の方は四つん這いだったかな。でも逃げる時は普通に人間みたく走ってたけど・・・。両方とも一言も声を出さすに走り去ったよ」

 そう言うマキちゃんは少し怖がっている様な表情を見せた。いつも元気なのに・・・。

 

 

 その日の午後、私は平井川くんの教室を訪ねた。平井川くんは机の引き出しから漫画雑誌を取り出して読もうとしているところだった。

「ねえ、平井川くん」

 私の声に反応して平井川くんが振り返る。

「お。益子優衣・・・」

「フルネームで呼ばないでよ」

「あ、ああ。それより、何か用かよ」

 面倒そうに答える平井川くんに私は強い意志を持って言った。

「茶色の獣・・・、やっぱり一緒に調べてほしいんだ」

 一人で調べてもいいんだけど、やっぱり夜の学校で私一人で行動するのは怖い。もし、茶色の獣や雪だるまが、何か危ない事柄だったとしたら、私一人じゃあどうする事も出来ない。だから平井川くんに協力してもらいたかった。

「何でオレが手伝わなくちゃいけないんだよ。他の誰かに頼めよ」

 嫌そうな声を出す平井川くんに手伝わせる方法は知っている。私はそれを口にする。ちょっと卑怯だとは思うけど、まあいいよね。

「手伝ってくれたら、マキちゃんと三人でのゴハンにつれて行ってあげるからさ」

 そう言うと平井川くんはバンと机を叩いて立ち上がった。

「優衣、お前さあ・・・」

 辺りを見回してから平井川くんは答える。

「それ、絶対だからな」

 いつもこうやって手伝ってもらってるんだよね。

 

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