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2009年12月20日 (日)

サンタが高校へやってきた 第3話

第3話「益子優衣」

 

 

 

 わざとガラガラと大きめな音を鳴らして、隣の教室の扉を開けた。昼休みの教室は騒がしいので注目を浴びるという事は無かったが、益子優衣はすぐにオレに気付いて話しかけてきた。

「あれ、平井川くん。どうしたの?珍しいね、うちのクラスに来るなんて」

 益子優衣は頭のてっぺんにお団子の様に髪の毛をまとめていた。おかげで152センチしかない身長が10センチくらい高くなってる。そのせいでおでこ全開なのだけど、大きめの瞳がキラキラと光っていて、おまけに少し童顔なのでかわいく感じる。

「マキちゃんがさ、益子が変な女を見たって言うから・・・気になって来てみたんだよ」

 少しふてくされた声で言うと益子優衣は大きな瞳をさらに大きくして声をあげた。

「本当?また一緒に事件解決する?」

「事件って・・・。変な女が屋上にいただけだろ」

「まあ、そうだけどね。気になるでしょ?」

「うーん。・・・それは、確かに」

 

 

 益子優衣とは今年の春に入学した日に出会った。

 体育館で入学式をしていた時だ。オレのクラスが40名、縦一列に並んでいたんだけど、右隣に益子優衣のクラスが並んでいて、ちょうど隣にいたのが益子優衣だった。

 その日は黒い髪をおさげにしていて、ちょっと好みだったからチラ見したら、大きな瞳と目が合った。ニコッと笑いかけられて、オレは不覚にもドキドキしてしまった。 

 そして、入学式が終わり教室に戻ると奇妙な事が起きていたんだ。全く理解できない奇妙な出来事。全員の机の上に鉛筆が一本置かれていたんだ。

 先生に聞いても、生徒の誰に聞いても知らないという、この鉛筆。不審者が校内に入り込んだという説や先生のサプライズ企画だという説が飛び交ったが、結局のところ何だかわからず、ほとんどの生徒は気味悪がって鉛筆を教室のゴミ箱に捨ててしまった。

 それを益子優衣はもったいないと言ってゴミ箱から拾い集めたのだった。そこに、たまたま通りかかったオレに益子優衣は言ったのだ。「これ、きっと誰かのプレゼントなんだと思う。それが誰だか、ちゃんと調べてみない?」

 そうして色々と調べ回った結果、学校の事務職のおじいさんが新入生に気を効かせて鉛筆を配ったという事を調べたのだ。その際、オレは益子優衣の推理のために色々と動くはめになり、グッタリと疲れた・・・という記憶がある。

 それが、益子優衣いわく『鉛筆事件』

 他にも『弁当事件』や『ポテチ事件』など下らない事件があるが、それはいつか話すとして、とにかく、しょうもない出来事を徹底的に調べるために何度も疲れるはめになったので、もう益子優衣と関わりたくないってのがオレの本音だ。

 

 益子優衣・・・、ええいフルネームで毎回呼ぶのは面倒だ。優衣は、人差し指を立ててアゴに当てて言った。

「これは・・・『屋上の女事件』だよ」

「センス無いネーミングだな」

 即座にオレがそう言うと優衣は「平井川くんは乙女心がわかってない」などと意味不明な反論をした。

「だってよ、事件じゃねーだろが。屋上に西洋風のドレスを着た女がいたってだけだろ」

「こ、怖い事言わないでよ」

 優衣が「なにそれー」という表情をしたから「お前が見たんだろが!」と怒鳴る。

「そうなんだよね。誰かな、あの人」

「知らないよ。もう現れないだろ。だから調べる必要もないし、調べようもないって」

「でもさ」

 急に優衣が小声になる。オレは聴き取りやすい様に優衣に一歩近づいた。

「平井川くん、知ってる?マキちゃん、体育館近くで茶色の獣が走り去るのを見たって」

「聞いたよ・・・。関係ないだろ」

「それがさ・・・」

 優衣はさらに声を落とす。

「うちのクラスの男子がさ、見たんだって」

「茶色の獣を?」

「サンタを」

「はあ?」

 急に大声を出したので優衣は「わあ」と耳をふさいだ。

「声大きいよ平井川くん」

「いや、だって意味わかんない事を優衣が言うから・・・、どこで何を見たんだって?」

「視聴覚室で、サンタクロースを」

 全く意味のわからん話になってきた。だから嫌なんだ、優衣と関わるのは。

 

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