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2009年12月18日 (金)

サンタが高校へやってきた 第1話

 

 後から思えば、その日は朝からツイてなかった。

 まず、起きるが遅れた。お母さんの「優衣、いつまで寝てるの」という大声で目を覚まし、枕元にあるピンク色のキャラクター物の目覚まし時計を見ると、普段起きる時間を二十分も過ぎていた。

 慌ててお風呂に入りシャワーを浴びたものの、間違えてお父さんのシャンプーを使ってしまい、自分の桃の香りシャンプーで洗いなおすハメになった。

 お風呂を出て制服を着る。台所にある冷蔵庫からブルーベリーヨーグルトと濃縮還元オレンジジュースを取り出して、交互に口に入れる。

 テレビをつけると、いつも見る占いのコーナーだった。いつもこれを見てすぐ出かけるから、時間的にはだいぶ追いついた事になる。

『12月生まれのあなたの運勢は・・・』

 私は12月25日生まれだ。つまり、クリスマス。誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントが同時になってしまうっていう・・・ちょっぴり損。

『残念、アンラッキーです。見てはいけないものを見てしまうかも。ラッキーアイテムはダージリンティーです』

 見てはいけないもの・・・かあ。お父さんの浮気現場とかだったら嫌だなあ・・・。

 朝食を終えて、昨日切ったばかりの髪を手ぐしで整えて家を出る。

「優衣、いってらっしゃい!」

 元気なお母さんの声に背中を押されて、もうだいぶ冷え込んだ12月の朝を歩きだす。

 この時、私はまだ思いもしなかった。

 あの占いが当たっていたという事を。もっと早く気付けば良かったんだろうけど。

 でも、私がそれに気付いた時は、すでに私はパニックになってしまっていた。

 

 

サンタが高校へやってきた

by cafetime  2009-12

第1話「体育館裏の獣」

 

「おはよっす」

 オレが教室に入ると、もうすでにほとんどの生徒が席についていた。あれっと思って教壇の方を見ると、担任の先生がギロリとこちらを睨んでいた。

「平井川、ずいぶん堂々とした遅刻だな」

「え、ええー?!」

 教室の壁かけ時計を見ると、始業時間を五分回っていた。

「え、いや、ちょ・・・」

 右腕にした腕時計を見ても同じ時間だ。

「う、うそー?! ど、どこで時間を勘違いしたんだ!?」

「平井川、遅刻した罰で今日はトイレ掃除な」

「そんなー!今時トイレ掃除って・・・、小学生かよー・・・」

 ガックシとうなだれながら自分の席に着く。どこで勘違いしたんだろ・・・。こんな事ならコンビニで漫画の立ち読みなんかしなけりゃよかったー。

 

 

 朝のホームルームが終わると、五分間の休憩となる。うなだれたままのオレに向かって傷口に塩を塗るヤツがいた。

「平井川ー、お前また遅刻かよー。たまにゃー努力して間にあう様にした方がいいぞ」

 そう言うのは陸上部の好野博一だ。最近染め直したという少し赤い髪と、メガネがトレードマークの元気だけが取り柄のアホだ。クラスではヒロと呼ばれている。

「ヒロは朝が強いからいいんだよ。オレはインテリな低血圧だからさー」

 インテリが低血圧なのかは全く知らないが、そう言ってみた。きっとアホのヒロなら信じるだろうから。

「へえ、インテリって低血圧なんだ」

 ほら。

「それよりさ、昨日の噂、聞いた?」

 ヒロが何だか興奮気味になって聞いてくるが、何の事かさっぱりわからない。

「何かあったっけ?」

「体育館の方にさ、怪物が出たらしいよ」

「か、怪物?怪物ってゴジラとかキングギドラみたいな?それともエレキング・・・」

「そんなデッカイのじゃなくてさ。人間じゃない何か・・・獣みたいなヤツだって」

「人間じゃない何か?」

 言われて体育館の方向を見る。教室の窓から、校庭をはさんだ向こう側に体育館は存在していた。あんなトコに怪物なんか出るのか・・・。この多摩境高校は創立四年目だから全ての建物が新しくて綺麗だ。ユーレイだの怪物だのは似合わない。

「誰が見たんだよー、そんなの。噂だろー」

 オレがそう言うと、ヒロは教室のハジにいる女子三人組を指差した。

「あそこのマキちゃんが見たらしいよ」

「マ、マキちゃんかよ!」

 ドキリとした。マキちゃんは、オレが入学当初から気に入ってるコだからだ。元気で活発で、よくしゃべる女の子。別段そんなにかわいい訳じゃないんだけど、好きなとこをあげたらキリがない。例えば、笑った時の声とか、それと・・・

「でさ、マキちゃんが言うにはね!」

「あ、ああ・・・」

「バスケ部の練習が終わって、暗くなった頃、体育館から出たら、サササッと何かが体育館の裏手に走りぬけたんだってさ」

 マキちゃんは女子バスケ部だ。ジョバス。そういう体育会系なトコも好きなんだよね。例えば、シュート打つ時の気合いの声とか、それと・・・

「聞いてる?」

 ヒロが不満そうな声を出すので「お、おう」と返事をする。

「何が体育館裏に走りぬけたって?」

「全身茶色の獣みたいなヤツだって」

「タヌキじゃね?」

「でもマキちゃんは、自分と同じくらいの大きさだったって言ってたよ。そんなタヌキいないって」

 言われてマキちゃんを見る。バスケ部にしては小柄だけど160cmくらいはありそうだ。またあの身長も好みなんだよね。それだけじゃない。例えば・・・ん?

「でもよヒロ、そんなデッカイ獣、校内にいたら危ないじゃねーかよ」

「だから噂になってるんだよ」

 冷静に考えると、そんな大きな獣いるわけがない。いるとしたら熊だろうけど、ここは田舎とはいえ東京都だ。熊が出るわけがない。やっぱりマキちゃんの見間違いだろう。ヒロが話を真に受けすぎなんだよ。

 

 

 そんな事をやりとりしていた日の夜だ。隣のクラスの益子優衣という女子が妙な女を目撃したというのは。

 

 

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