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2009年12月19日 (土)

サンタが高校へやってきた 第2話

第2話「屋上の女」 

 

 

 辺りはすっかりうす暗くなってしまっていた。私がハンドベル部の練習を終えて一人で校庭に出ると、校庭にはすでに運動部すらいなくなっていた。

「優衣ちゃーん」

 どこからか私を呼ぶ声がした。「優衣ちゃーん」

 声の方を見ると、校舎の三階の教室からハンドベル部の顧問の立花先生が手を振っていた。

 私が手を振り返すと、先生も手を振って声を出す。

「もう暗いから気をつけてねー!」

「はーい!」

 そう返事をすると、立花先生は教室の中へと入っていった。

 その時だった。

 立花先生のいた教室のさらに上。四階の教室のさらに上。屋上に人影が見えた。

 こんな暗い時間。それも冷たい風が吹いている今日、誰が屋上なんかに・・・。そう思って目をこらしたのがいけなかった。

 屋上にいたのは全身薄い青色の西洋風のドレスを着た女の人だった。女の人、と表現するのは、私と同じくらいの年にも見えるし、もっと大人の女性にも見えたからだ。

 その女の人は、笑っていた。声は聞こえないが、一人で笑っていた。うす暗い中で笑みを浮かべる西洋風ドレスの女。思わず鳥肌が立った。

 その時。女の人と目が合った。校庭と屋上だから、確実に目が合ったとは言い切れないけれど、目が合った気がした。

 するとその女の人は私の見えないところへと走って行ってしまった。

「なんだろ・・・」

 一人、呟いた時、遠くで何かが光った。一瞬だけ空を覆い尽くすような不気味な光。すぐにゴロゴロという低い音が響く。雷だ。雨が降るとマズイ。私は駅の方へと走りだした。

 

 

 

「あ、平井川!!出たってよ」

 オレが登校してきて教室に入ると、ヒロが駆け寄ってきた。

「出たらしいよ」今日も興奮気味にヒロが言う。

「何がだよ。スロットか?」

「スロットはマズイだろ、俺たちは高校生だよ?」

「じゃあ何が出たんだよ」

 少しキツイ口調で問うとヒロは「お、怒るなよ」と動揺した。

「昨日の夜さ、屋上にさ、ヨーロッパ風なドレスを着た女が出たらしいんだよ」

「なんだそれ?」

「ユーレイじゃないかな」

「何でそうなるんだよ。ドレス着て屋上にいたっていいだろ。きっとピアノ発表会に着ていくドレスを試着してたんだよ。間違いないね」

 オレが腕組してそう言うとヒロは「そんなコいるかなあ?」と首を捻った。まあ確かにそうだ。昨日は暖冬とはいえ夜は寒かった。そんな中、学校の屋上にドレスを着ていくヤツなんて想像つかない。

「でもよ、誰が見たっていうんだよ。噂だろ?」

 ヒロは「あいつ」と言って、近くにいたマキちゃんを指差した。

「マ、マキちゃんが!?み、見たのか!」

 胸が高鳴る。この話題でマキちゃんと雑談できるかもしれないから。こんなしょうもない話だけれど、マキちゃんと会話できればそれで良しだ。

「違うよ。マキちゃんは見たって話を友達に聞いただけだってさ」

「んだよクソ!」

 思わず床を蹴りつけた。でもまあいい、それでもこの話題で話しかけてみよう。オレはマキちゃんの席に近づき声をかける。

「うっす、おはよう!」

 するとマキちゃんは「おはー!」と元気な声を出した。この元気さが魅力的なんだよね。朝からこの声を聞くと今日一日やる気が出る。例えば・・・

「どうかした?平井川」

 マキちゃんに名前を呼ばれてはっとする。何で話しかけたんだっけ・・・。あ、そうそう、ユーレイの話題だ。

「マキちゃん、昨日、友達が変な女を見たんだって?」

 するとマキちゃんは「そうなの!」と大きな声を出した。

「なんかね、部活の帰りに屋上にいるのを見たんだって。何だろうね。アタシちょっと怖いな。こないだ茶色い獣みたいなのが体育館裏に走っていくの見たし・・・」

 安心しろ、怖いならオレが守ってやる。とか言いたいけど、そんな言葉を言う仲ではないし、そんなのテレビの中の言葉な気がして言えない・・・。第一、守る手段がわからん。

「でもさ、獣はマキちゃんが見たんだろうけど、ドレスの女は誰が見たの?」

「隣のクラスの友達」

「隣の?」

 そう聞くと、マキちゃんは友達の名前を口にした。

「優衣ちゃん。益子優衣ちゃん」

 思わずげんなりする。あいつか・・・。また、あいつと関わるのか・・・と。

 オレと益子優衣は高校入学当初からの知り合いだ。これまで色々あったから関わりたくない。なのにマキちゃんはあっけらかんと言った。

「優衣ちゃん、ちょっと怖がってたからさ、話聞いてあげてよ」

 マキちゃんのお願いに、マヌケなオレは思わず答えてしまった。

「ん、わかった」

 言った瞬間、「しまった」と思ったが、もう後の祭りだ。

  

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