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2010年11月 4日 (木)

空の下で-虹(5) 最終選考(その3)

十月第二週の土曜日がやってきた。

天候は曇り、ちょっと肌寒いくらいの気温で、風はほぼ無風。

午前中だけ授業があったんだけど、僕に限らず長距離チームのメンバーは誰もがソワソワとしていた事だろう。

なにしろ今日は東京高校駅伝の出場メンバーを決める最終選考のタイムトライアルをする日である。

男子は七人と補欠、女子は五人と補欠を決めるのだ。

今回は短距離顧問の志田先生にも手伝ってもらい、車二台で立川市にある陸上競技場へと向かった。

車内は二台とも静かだったけれど、五月先生の運転する車はロックが鳴り響いていた。

対する志田先生は80年代のナツメロだ。

志田先生が昔からやっていた「シダはわたしだ」というブログは、最近閉鎖したそうだ。

 

 

「先に女子のタイムトライアルからやる」

五月先生が以前から指示していた通り、まずは女子のタイムトライアルだ。

距離は3000mだから、400mトラックを七周半するというわけだ。

エントリーは女子全員がした。

三年生の大塚未華、若井くるみ、早川舞、そして一年生が三人だ。

正規メンバー枠は四名。一人が補欠に回り、一人がポジション無しだ。

さすがに未華は何の固さもなく、体を温めているが、他の五人は固い。

くるみは大きく息を吸ったり吐いたりしているし、早川は他のメンバーを睨みつけたりしているし、一年生なんかは目が泳いでいる。

見かねて五月先生は「コラコラ、誰が見てるわけでもないんだからリラックスしろよ」と言う。

すると早川が「じゃあ、アレは誰?」とスタンドの方を指差した。

「ん?」

確かに誰か中年の男性が座ってこちらを見ている。短髪で眉毛の濃い人だ。ジャージ姿なので体育会系の人だって事はわかる。

「ああ、あれは・・・松梨の顧問だな」

「な・・・」

「相原が宣戦布告したから、一応練習を見に来てみたってトコだろうー」

みんなが僕の方を見た。い、いや、すいません・・・

「へえ、面白い」

未華が首をコキコキと鳴らしながら笑みを浮かべた。どこかの格闘家か。

 

 

女子のタイムトライアルは前半から予想通りの展開だった。

まずは未華が圧倒的な実力で一週目から単独トップに躍り出た。

その後を早川が一人で追い、あと四人は団子だ。

その団子からも一年生が一人遅れ、また一人遅れた。

くるみと一年生一人がずっと一緒になって走り、くるみが五週目で生き残った。

そして前から落ちて来た早川を抜いて、二位でくるみがゴールした。

結果、圧倒的一位で未華、くるみが二位、わずかな差で早川が三位、四位に一年生が入った。

「はあ・・・はあ・・・、やっぱり先輩たちは早いですー」

四位の一年生がそう言うと、くるみも早川も嬉しそうな笑顔をした。

「ま、真面目にやってればすぐに早くなるよ。ただし、健康作りくらいな目的意識じゃ、全然ダメだけどね」

早川がそう言うと、くるみは吹き出した。

 

 

そうして男子の5000mタイムトライアルの時間はやってきた。

男子の出場枠は七人。10000mが一人、8000mが二人、5000mが二人、3000mが一人という変則パターンだ。

今日は5000mでトライアルを行い、その適性でメンバーを考えるという。

三年生からは僕、牧野、名高、剛塚、大山。

二年生からは染井、ヒロ。

一年生からは一色とあと三人。

合計十人で争われる事になる。

ウォーミングアップを終わらせると、松梨の顧問の先生も立ちあがった。

「英太、面白い話にしてくれたよな」

こう喜ぶのは名高だ。未華と同じ様な反応に苦笑いしたくなる。

まあ名高は当確だろう。

僕と牧野も当確だろうけど、どこの区間を走る事になるか。できれば長い距離を走りたいのでお互い二位を狙っている。

剛塚と大山はスピードがあまり無いので5000mは短かくて不利かもしれない。

逆に染井や一色は長い距離よりも5000mくらいの方が得意だ。

ヒロはとにかく一年生に負けない様に頑張ってもらいたい。一色には勝てないかもしれないけど。

そして他の一年生には、頑張ってもらいたいし、先輩たちの全力の走りを身をもって知ってもらいたい。

「よし、やるかー」

五月先生がスタートラインへと召集をかけた。

「じゃ、駅伝大会への最終選考だからな。全力で走る様に」

ぐぐぐっと緊張感が体を支配した。

心地よい感覚だ。楽しくなってきた。

「位置に着いて、よーい・・・ドン!!」

 

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コメント

海中道路駅伝大会でした(水中ではないです)

4車線の橋の両脇はまさしく碧い海

いつも強風なコースで1区5k36チームの中スタートしました


昨年1年ながら区間7位でしたので誰もが今年は区間賞を狙える!と思っていました。

第2中継所あたりで待てども来ないkenchan


1週間前に鼻と喉の風邪をこじらせ苦しかったそうです


23位 18分という大失速


しかし、襷をつないでくれて良かった


体調管理は親の責任また気持ちを新たに再スタートを切ります


英太クン達も駅伝シーズンですね


最後の大会松梨とどう絡むか楽しみです

投稿: kenchan-kouchan | 2010年11月 6日 (土) 20時49分

こんにちは!kenchan-kouchanさん!
 
海中道路駅伝大会!!
一瞬、SFの世界かと思いました(笑)
 
両側が海だなんて、僕の住む東京や神奈川では考えられない景色です!海の色も全然違うんでしょうね。いいなあ・・
 
kenchan、調子が悪かったんですね。18分というとkenchanとしては悔しいでしょうね。なかなか来なくて心配だったんじゃないですか?
でも怪我とかじゃなくて良かったです。
体育部の10代の頃って不調を隠して怪我する事が多いですから・・・(体験談)
 
季節はいつの間にか競技場シーズンから駅伝などのロードレースの時期になりましたね。
気温が変わって、応援する方も体調に気をつけてくださいねー。

投稿: cafetime | 2010年11月10日 (水) 10時21分

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