空の下で1.序章 前編
それは、よく晴れた日、まだ春なのに太陽がキラキラと眩しく感じる空の下での事だった。
正直な話、あんなことをいきなり言われるとは思ってなかった。
いや、言われる場所だということに気付いてなかったという、ぼくが少しウカツだったのかもしれない。校門の周りなんて部活勧誘のメッカじゃないか。
「君、足速そうだよね。ちょっとうちの部、見学してみない?」
のんびりお気楽な高校生活を送ろうと決めていたのにコレだ。
高校に入学して三日目にしていきなり上級生に捕まっちゃうなんて・・・。
そういえば中学の時もこんなだった。
あの時は下校するときに音楽室から吹奏楽部の音色が校門まで聞こえてた。
大ヒットしたハリウッド映画のテーマ曲だった。
彼こそは海賊・・・とは後から知った曲の名前だ。
前日にDVDで映画を見たこともあって、つい呟いてしまったのだ。
「かっこいーなー・・・」
呟いた場所は校門。時期は入学7日目という事もあり、近くで勧誘活動していた吹奏楽部のセンパイがすぐに話しかけてきた。
「あーゆー曲やってみたい?」
「え?」
「キョーミあったらこのチラシ見てね」
渡されたのはチラシというか、いわゆるプリントだ。
”吹奏楽部 部員募集中”
かわいいイラストでラッパを吹く女の子が描かれていた。
「トランペットかぁ」
楽器が吹けたらちょっとカッコいいかもなぁ。
そんな不純な想いもあって、とりあえず吹奏楽部の見学に行くことに決めた。
でもその時のぼくは、吹奏楽の事は何も知らなかった。
というか「奏」っていう字すら書けなかったんじゃないだろうか。
だって漢字は苦手だし。
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