空の下で ~桜~ 目次
・・・勝つためだけに走るんじゃない。みんなで駆け抜けた一年間を確かめるために走るんだ。
二年生になる英太たちの新たなる戦いが始まる!
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・・・勝つためだけに走るんじゃない。みんなで駆け抜けた一年間を確かめるために走るんだ。
二年生になる英太たちの新たなる戦いが始まる!
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長かった5000mも残り一周となり、各選手ラストスパートをかけだした。
ぼくはその少し前からスパートをかけていたので、勢いそのまま何人かを抜き去る。
残り300mで、前にいた落川学園のオレンジ色の髪の選手を抜くとき、何かされないように注意したが、相手はもうヘロヘロですぐに置き去りにできた。
そして残り200mで前方に内村一志を発見した。
「いたな・・・!」
前半飛ばしていた内村は、もう全く腕が振れてない感じだった。
その内村が何故か振りかえった。
ぼくの姿を見つけると、猛然とスパートをかけた。
早い!まだあんなに力を残していたのか。
それでもぼくは追いかけた。最後まで諦めないって決めたばかりだ。
しかし前半でついていた差は大きく、結局内村の方が数秒だけ先にゴールした。
それを見てもぼくはスピードを緩めずにゴールまで走り切った。
ガクンと膝から崩れる様にしてゴールしたぼくを雪沢先輩が抱えてくれた。
「はあ・・・はあ・・・すいません・・・・雪沢先輩・・・・」
「しゃべるな相原。とりあえずトラックの外まで行くぞ」
雪沢先輩と名高に肩を抱えられて競技場の端まで移動する。
「すいません、もう歩く・・・体力も・・・無くって・・・・」
ぼくが息切れをしながら言うと雪沢先輩は笑った。
「相原って・・・ホントに最後の最後まで力を尽くすよな。高尾山の時もそうだったし。オレ、けっこう尊敬するよ」
先輩に尊敬するとか言われて嬉しいような・・・でも順位的には雪沢先輩の方が遥か前を走ってたから微妙だよ。
「嘘で言ってるんじゃないぞ。持てる力を全て出し尽くすのって難しいんだからな。心のどっかで『もういいや』って思っちゃうんだからさ。なあ名高」
言われて名高はぼくの顔をチラリと見てからボソリと答えた。
「こいつ・・・多分すげえっすよ」
ぼくよりずっとずっと早い二人に褒められて変な気分だった。
男子5000mの結果は、1位が葉桜高校の秋津伸吾。
だいぶ遅れて2位が松梨付属の赤沢という選手。松梨付属は6位と9位にもいたので二人が都大会に進出となっていた。
7位には落川学園の白髪の選手が入ったという。
そしてそして!名高はなんと4位、雪沢先輩が8位で都大会進出となった。
ぼくは自己ベストを大幅に更新して16分57秒という自分では信じられないほどの記録を打ち立てたのだけど17位で、内村は16位で支部予選敗退だった。
終わってみれば多摩境高校からは四人も都大会に進出出来る事になり、陸上部設立史上、最多の進出という事でテントではお祭りモードだった。
女子走り幅跳び、三年生の二本松ゆりえ先輩。
女子3000m、二年生の未華。
男子5000m、三年生の雪沢先輩と二年生の名高。
四人へのお祝いにテントではジュースが配られ、「おめでとう」の声がたくさん聞こえた。
ぼくも心からおめでとうと言った。
悔しさは無かった。もちろん都大会へは行ってみたかったけれど、最後まで力を出し尽くしたし、ベスト記録も出した。
何しろぼくは今年中に17分を切ろうとしていたので、四月に17分を切ったのは快挙と言っていい。
しかし、このお祝いムードの中、染井だけは笑顔ではなく真顔だった。
「どうしたよ染井」
ぼくは気になって話しかける。
「いや、別に。オレが勝ったわけでもないし」
カチンと来たが優しく言ってみる。
「染井の事じゃなくたって、チームの事だよ。嬉しくないの?」
「嬉しいとかは・・・別にないです。ただ・・ナメてたなってのはあります」
「ナメてた?」
言ってる事がよくわからないので少し強い口調で聞いてしまった。
「雪沢先輩も名高先輩も、今のオレが競えるレベルの相手じゃないのはわかってました。でも他の先輩達はすぐにオレが勝てるだろうって思ってたんですよ」
ムカツク話だけど実際に剛塚と大山は染井より遅い。
「でも、今日の1500mの牧野先輩とか穴川先輩とか剛塚先輩を見てたらタイムはともかく・・・なんかすげえ気迫だなって。あの気迫があったら今後早くなるだろうなって思って」
入部以来、染井がこんなに長く話すのは初めてだ。ちょっと興奮してるのかもしれない。
「それに・・・やっぱ相原先輩は物凄いです」
「え?ぼく?」
ちょっとポカンとした顔をしてしまった。
「そうですよ。ベストタイム更新も凄いですけど・・・あんな倒れるまで力を出し切るなんてオレには出来ないです。それに・・・5000mって長い距離の種目で、後半どんどん伸びて行くなんて・・・凄まじいです。オレ、相原先輩をナメてました」
ナメられてたんだ・・・。そうだよな、ぼくって迫力ないしな。
「だからナメないで練習します。負けるの、すげー嫌いだし、試合出れないのすげーつまんないんで」
「そっか。でも、まあ応援もちゃんとやれよ」
「・・・・はい」
染井は仕方なくという感じで返事をした。
少し歪んでる気もするけど、こいつもまだまだこれからだ。
きっとこれから分かっていく。個人だけではなく、チームというものを。
「ではでは!!万歳三唱と行きましょうか!!」
ヒロが大声でそう言ったが五月先生が「調子に乗るな」と太い声で言うと、すぐに大人しくなった。
志田先生が場を締める。
「えー、今日は史上初、四人もの選手が都大会進出を決めた。どっちかというと短距離より長距離の活躍が多く、私はすこぶる不満である。なにしろ短距離はこの試合で引退する訳だからな。少し長距離の順位を分けてほしいくらいだ」
なんだか嫌な演説だ。
「しかしまあ、都大会進出を決めた二本松・大塚・雪沢・名高の四名にはやはりおめでとうと言いたい。それに他の選手たちも負けはしたが成長が感じられたり、気迫が感じられたりしてすごいいい大会だった。なので私は出場した選手全員によくやったと言いたい。お疲れ様」
志田先生に続き五月先生が話す。
「いや、すっごく良かった。感動したよ。感動させる走り、投げ、跳びってなかなか出来ないもんだぜ。それが出来たおまえらはスゴイ。でも油断せずにこれからも頑張ってくれ」
「では万歳三唱を・・・」
ヒロがまた言うが無視して部長の雪沢先輩が挨拶をして解散となった。
どうにも染井とヒロこと好野の桜コンビには疲れる。
翌週、駒沢競技場で高校総体・東京都大会が開かれた。
二本松ゆりえ先輩は決勝で惜しくも敗退。涙を流しつつも「やり尽くした」と言い、引退。短距離三年生はこの大会で全員が引退した。
未華は爆走を見せたものの順位的には平凡で敗退したが「都大会はレベルが違う!」などと興奮して語り、「来年はもっと上に行くけどね」なんて笑っていた。
雪沢先輩も同じく順位的には平凡で敗退。「楽しかった」と涙声で言った後、「秋に向けて頑張ろう」と意欲を見せていた。長距離は秋に駅伝があるので引退はしない。
名高は松梨付属の赤沢を追いかけてかなり上位で走っていたが惜しくも敗退。名高という名前を都大会で売った感じだった。
こうして季節は流れていく。
気がつけば校門の桜も全てが新緑となり、落ちていた桜の花びらも風と共に消えて行った。
その桜の木の下には花壇があり、そこの紫陽花がもうすぐ咲くという話題が出た頃、ぼくは衝撃の再会を果たす。
その再会は・・・今年のぼくの運命を大きく動かす事となるのだった。
空の下で 桜の部 END
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今月、5000mの試合を走るのは二回目だ。
こないだの春季記録会と今日の総体支部予選。走る場所も同じ上柚木競技場。同じ種目、同じ場所だっていうのに、いざスタート地点に立ってみると雰囲気が全然違う事に気づかされた。
何か殺気立っているというか、ピリピリしたムードが漂っているんだ。
やっぱり単純な記録会と、勝ったら上に進んでいくという総体では気合の入れ方が違うという事だろう。
「なんかこわいな・・・」
すでに空色のユニフォーム姿になったぼくがスタート地点でつぶやくと、雪沢先輩が背中をたたいてきた。
「緊張するな相原。記録会と同じ気持ちでいいんだ。力を入れすぎずにリラックスして行け」
「は、はい」
まあ緊張もするよ。去年は見てるだけだったこの総体支部予選に出れるだけでも嬉しいんだからさ。
男子5000mは55名参加で、一斉に走り、上位8位までが都大会に進出出来るというシステムだ。
去年の記録を見ると、ぼくにはとてもじゃないけど8位に入る実力は無い。
多摩境高校からは、ぼく、名高、雪沢先輩が出る。
名高は調子悪くなければ何とかなりそうで、雪沢先輩でギリギリといったところだろう。
ぼくはそういう戦いには加われない。それが少しだけ悔しくもある。
それでもぼくは全力で走る。
勝つためだけに走るんじゃない。みんなで駆け抜けた一年間を確かめるために走るんだ。
「おい相原。あの黒いユニフォームには気をつけとけよ。一応」
雪沢先輩が低い声で言い、ぼくはうなづいた。
55名の大集団がスタート地点でごった返している中で、異様に目立つ派手な髪型の三人の選手。髪がそれぞれオレンジ色、赤色、白色の三人。
黒いユニフォームに白字で背中に『落川学園陸上部』と書かれている。
「あれが落川学園か」
名高も警戒している様子だ。
こないだ、校門の所で待ち伏せしていた安西が言っていた事は部のみんなには伝えてある。
「妨害行為をする事がある」
安西はそう教えてくれた。それから落川学園の選手を見るのはこれが初めてだ。
妨害行為・・・。本当にそんな事を試合中にするヤツなんているんだろうか。
普通なら信じられない。これだけ観客がいる中で妨害だなんて。
でも、あの安西の言う事だ。他校に襲撃するような男が言うんだから嘘ではないだろう。
「落川学園もそうだけどさ。それより本当の相手はアイツらなんじゃない?」
名高は茶色のユニフォームを指差した。
「松梨付属高校・・・か」
マツナシ付属・・・。この支部では最強のチームだ。誰かが物凄い早い訳じゃないらしいけど、チーム力としてはズバ抜けている。
特に二年生の赤沢って言うヤツの成長が著しいと牧野が言っていた。
でもこのレースの本命視されているのは葉桜高校の秋津伸吾だ。
緑色のユニフォームを着た秋津の姿が前方に見える。
少しジャンプしたり体を揺らしたりしている。その横に内村一志がいてぼくをチラッと見たが何も言わなかったし、いつものニヤニヤ笑いをしてくる事も無かった。
時間になり、選手が集合したかと思うとすぐにスタートとなった。
いよいよだ、なんて感慨にふけってる時間も余裕もなく走りだした。
55名が一斉に走りだすので、近くの選手と体がぶつかったりした。
それでもいい位置を取ろうとみんな必死だ。
「うげ!!」
誰かのうめき声が聞こえた。一人、横腹を押さえながらスピードダウンする。
そこへスルリと落川学園の白い髪の男が進んできた。
「まさか・・・?」
思わずつぶやくものの、なんの確信もないのでとにかく位置を取る。
ぼくはその白い髪の男のすぐ後ろについて走った。
1000mを走ると、先頭集団が出来上がった。
20名ほどの大集団。それにぼくも付いて行く。
なんとか付いていけないスピードではない。
しかし、2000mを過ぎると、次々と選手が脱落していって、ぼくも粘ったけど2400mくらいで遅れた。
その時には先頭集団はたったの10名ほどになっていて、その中には名高・雪沢先輩・秋津伸吾・松梨付属が三人・落川学園の白髪の男などがいた。
驚いた事に内村一志がまだ先頭集団に付いていた。
「ウソでしょ?!」
心で叫んで、春季記録会での内村の言葉を思い出した。
・・・・・・才能が開花しつつあるんだよねー。
ハッタリじゃあなかった?
4000mを過ぎて、秋津伸吾に周回遅れにされた。
さらに松梨学園の3人にも周回遅れにされそうな勢いだ。
前半、頑張って先頭集団に食らい付いていったせいか、体力が底を尽きかけていた。
足が重い。手が重い。体が重い。そして何より気分が重い。
都大会を目指す連中との圧倒的な実力差を見せつけられ、戦意を失いつつあった。
「こんな連中と戦う力なんて無いよ」
そう考えてしまった。
松梨学園の選手が3人縦に固まったまま、ぼくを周回遅れにして抜いて行く。
3人の先頭の選手のユニフォームにはAKAZAWAと書いてあり「あれが赤沢か」と思う。
何が「飛び抜けたスター選手はいない」だ。全員がスター選手じゃないか。
4200m通過。あと2週。
まだ800mもあるのに、ぼくはスピードがどんどん落ちていく。
「あいつらには一生かかっても追いつけないって。都大会なんて一生無理だって」
そんな考えが頭を巡る。
歩きたい。もう、歩いちゃいたい。
そう思った時、観客席からの声が聞こえた。
「ナニあきらめとるんじゃーー!!!」
他の歓声をかき消すかの様な大声を張り上げてたのは未華だった。
「そんなダサイ走り見せてんじゃねーぞーー!!!」
だ、ダサイ走り??
チラリと未華の声の方を見ると、未華の他にもくるみ・牧野・大山・ヒロが何か大声で叫んでいた。
みんな必死な表情で叫んでいる。
「最後までファイトー!」
くるみの声が頭に響く。必死な声だ。
最後まで・・・。
応援してるみんなが必死なのに、なんで走ってるぼくが必死じゃないんだ?
最後まで・・・。
そうだよ、ちゃんと走り切らなくちゃ。必死になれよ。
最後まで・・・。
だって最初に思ってたじゃないか。勝つためだけに走るんじゃなくて、みんなで駆け抜けてきた一年間を確かめるために走るんだと。
自分を確かめろ!!
ぼくは一瞬目を閉じた。
体中の残されたエネルギーをほんの一瞬だけ心に集める。
「最後まで諦めるな!」
そう念じて目を開き、前の選手を追った。
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今年の高校総体・東京支部予選会の会場は、いつもの上柚木競技場だ。
初日は短距離・中距離チームがメインで熱戦を繰り広げていて、長距離は応援とサポートに徹底した。
短距離チーム一番の期待は三年生の二本松ゆりえ先輩。
細身の長身で、黒くて長めの髪をポニーテールにして、大きなストライドでタッタと走る。
女子100mと、200mにエントリーしていてるが、一番期待されてるのは走り幅跳びだ。
ぼくらは二本松先輩の幅跳びを跳躍場の真横で観戦した。
長距離選手のスパートとは比べモノのならない程の速さで助走をして、ポーンと空中へ飛び出す。
二本松先輩はまるで空を歩くように跳び、見事7位で都大会進出を決めた。
7位と表示された時、多摩境高校のメンバーからは歓声が怒号の様に響いた。
それより前、朝一番に1500mの予選があった。
うちからは牧野・剛塚・穴川先輩の三人が出場した。
予選は5組あって、それぞれ上位6位に入ると午後にある決勝に進める。
この大会は一つの種目に三名の選手を送れる。ぼくと雪沢先輩と名高が5000mに出る事になっていて、大山は試合に出る機会は無い。
それでも大山は全く腐る事はないから凄い。(もともとダイエット目的ってのもあるが)
「声出していこうね!」
応援する時、大山はそう言った。
ちょっと切なくなったけど、ぼくらは大声で応援しまくった。
染井が声出してなかったので、未華が頭をひっぱたいて「声出さんかい!」と怒鳴っていた。
さすがの染井も「すいません」と言って大声で応援していた。やはり未華は怖い。
しかし剛塚も穴川先輩も予選で見事敗退。牧野でさえギリギリ7位で予選敗退だった。
「短い。1500mは。もっと長くないとダメだな」
試合後、牧野はそんな事を言ってた。陸上部以外の人が聞いたらたまげる言葉だよ。
剛塚はさっぱりした顔でいたが穴川先輩はぼけーっと空を見上げてた。
「どうしたんですか」
問いかけると穴川先輩は「終わったな」とつぶやき、少し間を開けて続けた。
「このインターハイ支部予選会。一度くらいは都大会に行ってみたかったな・・・」
そうか。三年生はこれからの試合は全て「最後の試合」になるんだ。
秋の新人戦は二年生までしか出れないから、こうして支部大会・都大会・関東大会と勝ち上げって行く大会はこれが最後だったんだ。
もちろん、個人戦に限らなければ駅伝があるんだけれど。
空を見上げる穴川先輩を見て、ぼくは少しウルっときたが、ヒロが何故かオイオイと号泣していた。熱すぎるよ。
「よし、明日の雪沢と名高に頑張ってもらおう!」
穴川先輩がちょっと苦しそうな笑顔でそう言うので
「あの・・・ぼくも明日出るんですけど・・・」
と言うと「あ、わりい」と悪びれた風もなく言われた。
その後、たくみが800mの予選に出たが、見事に敗退。
結局初日に都大会行きを決めたのは幅跳びの二本松ゆりえ先輩だけだった。
スポーツってのはなんて残酷なんだろう。
どんなにどんなに努力したって、相手の方がわずかに努力と才能が上回っていただけで「負け」の烙印を押されてしまう。
それなのに・・・いや、ほとんどの選手が敗退する運命にあって、勝って進むのは一部の選手だけだってわかっているのに、誰もが努力を惜しまない。(惜しむヤツもいるけど)
陸上なんて数字で記録が出るから尚更に実力差がハッキリと言い渡される。
だけど、走る。走る。走る。
単純に勝つのが目的な名高とかもいるけど、負けたとしたってそれまでの努力や辛さや楽しさが無駄になるわけじゃない。
ぼくはそう思う。そう思えるから走れる。
だから牧野たちが敗退したのを見て「オレを出せば可能性あったのによ」とか言う染井には全く共感出来ない。
言ってる事はわからなくもないけど、強豪高校でもないぼくらはそういう考えではない。
支部予選会二日目、まずは最初に女子3000mがある。
うちからは未華とくるみと早川が出場する。
この競技は予選は無くて、いきなり決勝となり8位までが都大会に進める。
50名もの選手がスタート地点に集合すると、観客席からでは未華たちがどれなのか全くわからなくなった。
「三人とも頑張ってほしいな」
五月先生が腕組みをしながらスタート地点を眺めている。
ややあってスタートした。50名が一斉にスタートするのは迫力満点だ。
ダダダっと音をたててぼくらの前を通過していく。
一周すると三人の位置がわかった。
早川は大集団の一番後ろ。くるみはその集団の真ん中へん。未華は・・・ほぼ先頭だ。
「すげえ!!」
牧野が大声を張り上げる。
「いけー!!未華!!GO!!」
明らかに未華だけに送る声援に五月先生は苦笑した。
雪沢先輩と穴川先輩が「ついていけー!!」とか「遅れるなー!!」とか応援する。
ぼくと大山はとにかく「ファイトー!!」の連発。剛塚と名高は黙って試合を睨む。
ヒロは自作の変な赤い旗を振りかざしていて、染井は座ったままレースを見ている。
やはり染井はなんとかしなくちゃ・・・と思う。
それより今は試合だ。
早川は集団から遅れるが、くるみは集団に食らい付いて行った。
あのコ、いつの間にかずいぶん早くなったんじゃないかな・・・。
観ていて拳に力が入る。未華の応援ももちろんしてるが目がいくのはくるみばかりだ。
頑張れ・・・頑張れくるみ・・・・と未華と早川。
未華はなんと6位でゴール!ベスト記録更新の10分28秒で都大会出場!!
しかも・・・ぼくの3000mのベストタイムより早い!
くるみはフォームが乱れたものの最後までペースは乱れずに20位。ベスト更新。
早川は39位。へえ、意外にも11人も抜いてるよ。
未華の都大会進出というお祝いムードのままぼくらの男子5000mの時間がやってきた。
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桜の季節はあっという間だ。
満開になったと思ったらすぐに散り始める。
今年は幸いにも桜が咲いてから雨が少なかったので、散るのには時間がかかった。
ぼくら長距離チームは4月下旬に行われる高校総体の支部予選会へ向けて必死な練習が続いていた。
去年は雪沢先輩が5000メートルで都大会に進出した。(都大会の予選で敗退)
それを見に江戸川区まで行ったのが懐かしい。
当時は「すげえ」くらいにしか思ってなかったんだけど、都大会進出って本当にすごい事だというのが最近わかってきた。
そもそもこの高校総体は長距離チームの大イベントの一つだ。
うちのチームはこの春の高校総体、秋の新人戦、そして冬の駅伝を年間のメインイベントとして活動している。
新人戦と駅伝にはぼくも去年出たけど、この高校総体は初めてだ。
インターハイとも呼ばれるこの試合は、支部予選会で幕を開ける。
東京を6つの支部に分けて行われるこの大会の各8位までが都大会へと進める。
今年の都大会は駒沢競技場で行われる予定で、ぼくらが目指すのはそこになる。
もちろん都大会より先も長い、さらに進めば南関東大会。そこで勝てば高校総体の本戦へと進めるわけだが、それはスター達の戦いであってぼくらに縁は無い。
もし、知ってるヤツで行けるヤツがいるとすれば葉桜高校の秋津伸吾くらいなものだが、秋津でさえ去年は南関東大会で敗れている。
そんな上の戦いはどうでもいい。目指すは都大会、駒沢なわけだ。
『行くぞ!駒沢!!』
部室にはそんなスローガンが張られていた。
これは一年生の好野博一が勝手に墨汁で書いて張ったものだ。
書く時に墨汁が部室にこぼれて大騒ぎになった。
「暑苦しいんだよオマエ」
名高に冷たく言われたものの好野は「オレも行きますよ!駒沢!」とか叫んでいたが、一年は今回の試合にはエントリーされていない。
それに好野は大山よりもはるかに遅い。
「誰かオレの才能をどうにか引き出してくれぇー!!」
好野がそう大声を出せば染井は「無いんじゃね?」と冷たく言い切る。
ホットとクール。好野と染井はそんな対極な一年生だった。
染井は普段は全くやる気が無かった。
ジョックや筋トレやフォームの練習などでは端の方で嫌そうな顔でやっている。
ところがタイムトライヤルになるとがぜんやる気を出す。そして早い。
仮入部して一週間で5000メートルのタイムトライアルを行った。
これは支部予選会前の最終の全力走だったので、全員が必死に走った。
1位はぶっちぎりの名高。2位が雪沢先輩。
3位以降は一気に離れてぼく・牧野・穴川先輩、そしてなんと染井、少し離れて剛塚、大山。好野は歩いてゴールという結果だった。
名高は雪沢先輩以上の実力になった事は間違いない。
名高の事だからエラソーな事を言うのかと思ってヒヤヒヤした。
レース後、五月先生が名高に「エース当確だな」と言うと名高はこう言った。
「エースはオレです。間違いなく」
少し悔しそうな顔をする雪沢先輩を見て、名高はこう付け加えた。
「エースはオレだけどリーダーは雪沢先輩です。それも間違いないです」
少しの間、名高と雪沢先輩をお互いを見つめあっていた。
そして無言でうなづき合った。
すげえ、と思った。
二人はぼくらとは違う次元で言葉無しで語り合っている。この時の名高と雪沢先輩のやりとりは思いだしただけでも鳥肌が立つ。
エースとリーダー。互いの能力と才能を認めあった者同士の、先輩後輩を超越した関係。
染井は納得してない様で、ぼくに聞いてきた事がある。
「相原先輩。なんで名高先輩は雪沢先輩からリーダーの座を奪わないんですかねえ?実力世界でしょ?スポーツって。指揮権握っちゃえば楽なのにな」
「違うよ染井。実力世界だけど、記録だけじゃない力ってのもあるんだよ。チームをまとめる力は雪沢先輩の方が上なんだよ」
「そんなもんですかねえ?」
染井は大きな目を不満で滲ませた。
きっと染井は記録だけしか考えないタイプなんだろうな、と感じた。
・・・もったいないな。
「オレ、剛塚先輩と大山先輩には勝ったから、あの二人には指導受けなくていいのかと思ってたんですけど・・・それも違いますか?」
そんな事もわかんないのか・・・と思いつつも口には出さずに別の事を言う。
「記録では勝っても、パワーは剛塚、洞察力と粘りでは大山が上だ、その辺の指導を受けなよ」
「相原先輩には?」
「ぼく?うーん、トランペット教えてあげようか」
「け」
冗談を言っただけなのに、真顔で「け」と言われた。面倒な後輩だ。
そうしているうちに桜は散り、新緑へと色を変えていった。
校門の所に咲いていたソメイヨシノも綺麗な緑色へとあっという間に変わった。
しかし陸上部のソメイヨシノこと、染井と好野は相変わらずなままだった。
「ヒロって呼んで下さい!」
好野がしつこくそう言うので、部員も次第にヒロと呼びだすようになり、好野・・・いや、ヒロは満足そうだった。
こうして4月下旬、新緑の桜の木に囲まれた上柚木競技場で支部予選会は開会された。
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新しいクラスの担任は栃木先生という30歳の男の先生だった。
ちょっと細すぎる体を理科で使う白衣に身を包んでいる事が多いらしく、見た目通りに化学の授業を担当しているという。
「僕は進学にわりと力を入れている。部活を否定する訳じゃあないが、勉学も疎かにならないようにキッチリとやってくれたまえ」
白衣は使い過ぎで少し薄汚れているし、白衣の下から出ているズボンはちょっとシワのあるグレーのチノパンなのにメガネだけは高級ブランドのものをかけている。
初めてのホームルームの後、未華が「ドラマの主演やった物理学者のマネしてるらしいよ」と言った。
「ドラマって・・・映画になったやつ?」
「そう、容疑者Zの献金。俳優はカッコいいから学者やってもサマになるけど栃木先生じゃあねえ・・・」
「まあ・・・気分が乗るならいいんじゃない?」
「そう?じゃあアタシもなりきってみようかな」
未華は最近勢いのある若手人気女優の名前を出したので、ぼくが「はあ」とテキトーに答えたら頭をスパーンとはたかれた。
数日すると狭い部室に人が溢れかえっていた。
今日から新一年生の仮入部や見学が始まるのだ。
部室の中には二、三年生が陣取り、部室前の廊下に新一年生がたむろしている。
「おい!一年も着替えだけは部室内でしろ!着替えたら校庭に移動しろ」
何故か牧野が仕切っていて、一年が着替えて移動すると「先輩っぽいだろ」と笑った。
そうか、ぼくらももう先輩か。なんて今頃思ってどうする。
20人以上いた新一年生も、短距離・中距離・長距離・投擲とに別れると騒がしくなくなった。
ちなみに投擲ってのは砲丸投げ・円盤投げなど投げる競技の事で、今年から新たに新設された。
五月先生も志田先生も投擲の事は専門外なので、近くの大学からコーチを週に二回呼んで活動していくとの事だった。新一年生は3名が仮入部した。
短・中距離は今年も志田先生で、新一年生12名を加えて全28名の大所帯だ。
そしてぼくら長距離には男子7名の新一年生が仮入部してきた。女子はいなかった。
雪沢先輩・穴川先輩・名高・牧野・剛塚・大山・ぼく、それに未華・くるみ・早川の10名と合わせて17名。これもかなりの人数だ。
校庭のハジに長距離メンバーが集合して五月先生が挨拶をしている。
春の暖かい日差しの中での初集合となった。
新一年生は皆少し緊張した面持ちで先生の話を聞いている。
ぼくは去年、雪沢先輩に勧誘されて牧野と一緒にここに来た事を思い出していた。
あれから一年か・・・。早いもんだ。正直、何が何だかわからないうちに今日になってしまった気もするけど、得てきたものは多いはずだ。たぶん。
あの時はまだ五月先生はいなくて雪沢先輩が仕切っていた。
それで名高が「挨拶なんていいから早く練習しましょうよ」的な発言をしてヒヤヒヤしたもんだった。
「センセイ!!挨拶なんてこのくらいにして早く走りましょうよ!体がウズウズするんすよ!」
それぞれ自己紹介中にひと際大きな声で愛想良さそうなメガネ君がそう言った。
なんだコイツは。去年の名高みたいな事を言いやがって。
ん?チラシ配りの時にぼくに挨拶して来たヤツか。
「なんかこう!ワクワクしちゃって!早く走りたいっすよ!」
メガネ君は今にも飛び上がりそうな程にテンション上げて大声で訴える。
ここで穴川先輩がシラッと尋ねる。
「んー、誰だっけ君。自己紹介くらい先にやろうぜ」
メガネ君はシャキっと穴川先輩の方を向き敬礼して言った。
「一年B組、好野博一っす!ヨシノって呼んでください!ヒロでもいいっす!」
ヨシノ・ヒロカズ・・・。メガネに注目が行ってしまうけど少し赤い髪だ。別にいいけど。
それより、細身だし目に力はあるしこのやる気だし、もしかしたらけっこう早いヤツかも。
17名での準備体操はなかなか壮観だった。なんだか強いチームに入った様な感じ。
「イチ・ニー・サン・シー」と雪沢先輩が体操しながら言うと16名が「ニー・ニー・サン・シー」と言いながらやる。
この声が今までより確実に多い。それに仮入部初日だからぼくらも一年も声だけは大きいのだ。
でも一人だけ声の小さい一年がいた。いや、名高も小さいけど。
「おい、そこの一年、声小さいぞ。声出してけ」
穴川先輩が注意をすると、そいつは「あーい」と無愛想な返事をして声を大きくした。
穴川先輩はちょっとムッとした表情をしたけど、それ以上は何も言わなかった。
自己紹介で聞いた名前は・・・・確かあいつは・・・染井だ。染井翔。
童顔でチビの染井。体操はキチンとやっているのに、何故か気だるいオーラが漂ってる。
ダメかもな染井は。やる気が感じられない。仮入部だけでいなくなるタイプだと思う。
一年生を交えての初めての練習は、学校を出て小山内裏公園まで10分走り、公園内で40分ぐるぐるジョックして帰ってくるという定番コースだ。
ぼくらも最初はこの練習で始まり、一年で何度も何度も走ったコースだ。
このメニューは今では雑談しながらでも60分走り切れるが、最初の頃は名高以外は誰も走り切れなかった。未華は走ってたかな??
今年も公園内をグルグルとジョックしている間に一年生が次々と脱落していった。
驚いた事に、あんなに威勢の良かった好野博一が二番目に遅れていった。
「はあ!はあ!つ、ツレエ!!こ、高校陸上ハンパねえ!!」
口を大きく開けブサイクな顔をして遅れていくのを大山が辛そうに見ていたのが印象的だった。
逆にやる気の感じられなかった染井翔は最後までついてきた。
「やるじゃん、染井くん」
ゴール後、ぼくが素直にそう言うと「このくらいなら全然平気です」と笑いもせずに言った。
結局、新一年生で最後まで付いてこれたのは染井一人で、好野はブービーで学校に戻ってきた。
「染井って中学の時、1500メートルで都大会まで行ったらしいよ」
帰り道、たくみと大山との三人で歩いているとたくみがそう言ってきた。
「都大会?!」
「そう。中距離に仮入部してきた一年が言ってた。同じ中学らしくて」
「って事はかなりな実力者って事だよね。ぼくよりも早そうだ・・・」
大山が嬉しい様な困ってる様な微妙な顔をしてつぶやく。
「どうなのたくみ、中学で都大会出るのってやっぱスゲエの?」
ぼくが聞くとたくみは「質問されるのは嫌いだ」と言ってから答えた。
「まあ高校ほどのレベルじゃないけど、やっぱ都大会まで行くって事は地区予選を勝ってる訳だからね。オレの想像だと・・・穴川先輩くらい?いや、英太くらい早いかもな」
「英太くんほどのレベル!?」
大山が驚いた顔をしてるけど、それって早いって事なのかよくわからない。ぼくなんて経験一年だけだし、地区予選で敗退してるし。
どちらにしても先輩として負けないように気合いは入れなくてはいけない。
一週間後、仮入部組は激減し、長距離チームで生き残っていたのは染井と好野だけだった。
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いつもより一時間も早く部室へと着くと、すでに未華がいて「オハヨ!」と元気に挨拶をしてきた。
「おはよう」
未華はいっつも朝から元気で尊敬する。
「昨日、デートどうだった?」
ニヤニヤしながら気色悪い声で聞いてくる未華。尊敬出来ない。
「どうって・・・た、楽しかったよ」
ぼくはヘラヘラしてしまって未華に「気持ちワル!」と言われた。
「で、コクった?」
「こ!!? 告白なんてしないってば! まだそんな段階じゃないし!」
ムキになって否定するぼくを見て未華はお腹をかかえてケラケラと爆笑している。
その腹、蹴っ飛ばしてやりたい・・・。
と、思ったら急に真顔になって変な事を言う。
「アタシ、好きだよ。英太」
「す?!」
「英太のそういう、恋愛にのんびりというか臆病なところ。そういう人って好きだな」
イキナリ異性の名前を使って、好きだなんて単語使うなよ。一瞬勘違いしちゃったじゃん。
「おはよー」
そこへ牧野とくるみと早川が入ってきた。
「お、役者が揃ったねえ」
未華は腕組みをしながら満足そうにうなづく。この部の裏のボスみたいだな・・・。
ぼくらは各自、勧誘のチラシを持って校門へと移動した。
桜が満開を迎えた校門付近では、すでに野球部・サッカー部・吹奏楽部・バスケ部・水泳部が陣を取っていた。
「うわ!みんな準備早いな」
牧野が驚いて大声を出すと、バスケ部の君島が気づいて手を振っていた。
バスケットボールを持っている。似合っていてカッコいい。
水泳部の石塚が早くも「キミー」と連発しながら何かを話しているのが見える。
吹奏楽部には日比谷の姿もあるし、サッカー部には柏木直人もいる。
各部、新入生勧誘には必死だ。
「負けてらんないよー!!」
未華がひときわ大きい声で叫ぶと、さっそく新入生らしき生徒に向かって走って行った。
「陸上部よろしくお願いしまーす」
ぼくはくるみと組んでチラシ配りをする。チラシを受け取る人、「すみません」と言って逃げる人、様々だ。
中には明らかに陸上部に興味あるヤツもいた。
「5000メートルを走りたいと思ってます!是非よろしくお願いします!!」
やたら礼儀の正しいメガネ君だった。きっと彼はぼくの後輩になるんだろうな、とか思う。
そんな勧誘活動を30分も続けると、部室に戻る時間となった。
「おーい、相原!」
部室まであと少しのところで柏木直人が駆け寄ってきた。
「どうだよ陸上部は!けっこう入りそう?」
相変わらずの爽やかスマイル。男でさえ惚れてしまうような。
「どうかなー。入りそうなヤツはいたけどね」
「マジで?!いいな。若井さんは誰か勧誘出来た?」
なんでそこでくるみに話題を振るんだよ。ってかそれが目的なんでしょ。
「うーん、どうかなあ?わたし、あんまりこういうの得意じゃないから・・・」
くるみが不安げな表情でそう言うと柏木は「そうなの?すごい社交的に見えるのにね!」などと笑顔で言った。
「ほんと?嬉しいな」
ちょっと待てーい!!なんで嬉しいの、そんなのが!
「わたし大人しく見られるんだけどなあ・・・。まあ実際静かにしてる方が好きなんだけど」
「へえ、そうなんだ。あ、先輩が呼んでるや!またね!」
そう言って柏木はサッカー部の部室へと走って行く。
一陣の風の様に現れ去っていくそんな男だ、柏木直人は。
反撃の時間も何も無い。
新しい教室へと入る。今日からは二年生だ。
ぼくは理系を選んだ。今までと違う3階の教室はなんだか違う匂いがした。
とりあえず名前順に席が指定されていて、ぼくは相原なので名前順では一番という事で、廊下側の一番前の席だった。
席に座り、教室を眺めると、半分以上は知らない顔だったけど、一年生の時に同じクラスだったヤツも少しはいて安心する。
「あれー?教室でも英太と一緒かー」
髪を手櫛で整えながら、教室に入ってきたのは未華だった。剛塚もいる。
「あ、未華と剛塚も理系なの?」
聞くと未華がニカッと笑って「アタシ、科学が得意なんだよねー」と意外な事を口にする。
「そうなの?剛塚は?」
「オレは漢字が嫌いだ。特に部首がな」
だから文系を避けたと・・・。それだけの理由らしい。
ぼく・未華・剛塚のいるこのクラスで新しい日々が始まる。
そのせいか、未華と剛塚には後々すごく世話になる事になる。
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ピンコロピンコロピロリラリ。
ピンコロピンコロピロリラリ。
朝っぱらから何の音だと思って布団の中で薄く目を開けると、机の上の携帯電話が鳴っていた。
メールの着信音だ。寝る前にバイブにするのを忘れたんだった。
布団の中から思い切り手を伸ばすがギリギリで届かない。
ピンコロピンコロピロ・・・。
少し布団から出てやっと携帯を手にしたら着信音が止まった。
携帯のサブディスプレイには『09:32』という時間と『着信メール1件』という文字が出てる。
誰だよこんな朝っぱらから。という思いで微妙に腹が立つ。
今日は新入生の入学式なのでぼくら在校生は休みだ。昨日試合だったんだしゆっくり寝させてくれ!なんて思いながらも一応メールを読む事にする。
「迷惑メールじゃないだろな・・・」
誰からにしろ、休みの朝のメールは迷惑メールだ。
着信BOXを開くと『若井くるみ』と表示されていた。
思わずガバッと布団から飛び起きる。
『今日ひまですか?』というタイトルを読んで「ひゃあ!」と声を出してしまった。
ま、ままま、まさかデートのお誘いか!
本文には『未華と一緒に新入生勧誘のチラシ制作をする予定だったんだけど、未華が喉が痛いから今日はムリみたいなの。一緒にファミレスかどこかで作るの手伝ってくれないかなあ?忙しい?』と書いてあった。
ぼくはすぐに『全然忙しくない!ヒマな人だよ!』というビミョーな返信をしてしまった。
「いやあ・・・全然迷惑じゃないや、迷惑じゃない!」
パジャマのまま大声でそう言うぼくを母親が訝しい目で見ていた。
多摩センターという駅を降りると、私服姿のくるみが手を振っていた。
春らしい明るい薄ピンクのニットカーディガンを、白いタートルネックTシャツの上に合わせていて、下はジーパンとスニーカーという動きやすそうな格好だ。肩から小さめの茶色いショルダーバックをかけている。
大人しい印象の若井くるみだけど、スニーカーとか見るとやっぱり運動部なんだなあと思う。
「ごめん、待った?」
「うん、すんごく」
思わず時計を見ると、待ち合わせ時間の5分前だ。
「あ、うそだよ。今来たばっか」
「嘘かい」
「スイマセン」
全然反省してない感じのこのセリフはよく聞く。口ぐせなのかもしれない。
駅から歩いてすぐのところに多摩センター通りという大通りがあり、その沿いにある大手チェーンのファミレスに入った。
店員さんに「何名様ですか?」と聞かれ、得意げに指を二本立てて「二人です」と言ってみる。
やってみたかったんだよね、コレ。
窓際の席に通され、座るとメールが来た。未華からだ。
『どうよ調子は?アタシわざと喉痛いってくるみに言ってみたんだよ。感謝しな。英太くん誘えばって勧めてあげたんだからね。今度なんかおごってよ』
そういう事か。未華には何かお礼をしとかなくちゃな。ん、メールに続きがある。
『いくら二人きりだからってチューとかしたらダメだからね!』
「す、するかよ!」
思わず声に出してしまい、くるみに「何を?」と聞かれ、慌てて「え、食い逃げ」と言うと「当たり前だよ」と強い口調でピシャリと言われた。
新入生勧誘のチラシ作りの前に、二人ともランチメニューを頼んだ。
ぼくは若鳥のみぞれから揚げ定食。くるみは和風パスタセット。
メニューが来て食べていると、くるみが「ゴメンね。こんな形になっちゃって」と言った。
「え?」
「ほら、二人でお茶しに行く約束してたじゃない。こないだ桜ケ丘公園に行った時にさ」
「あ、ああ・・・」
なんだか顔が赤くなってしまった。そんな事には気付かずくるみは話を続ける。
「今日さ、このランチしてチラシ作りしたらさ、その・・・駅の反対側にあるカフェに行かない?えっと・・・その・・・ちょっとお洒落なお店でさ。一度行ってみたいなって・・・ど、どう?」
あ、あれ?なんかぼくじゃなくて、くるみがどもってるぞ?
ぼくをお茶に誘うのそんなに嫌なのかな・・・。もしかして。いや、だったら誘わないよな。
「う、うん。行こうよ」
こっちまで噛んでしまった。
でもくるみは嬉しそうに「ホント?じゃあ行こう!」と言った。
新入生勧誘のチラシのデザインはすぐに決まった。
後は明日学校の職員室で大量コピーをすればいいだけだ。
不安はデザインよりも陸上部に何人が入ってくれるかという点だ。
「私の友達の田中ちゃんてコが言ってたんだけどね。吹奏楽部は10人体制で校門に陣取って勧誘するらしいよ」
「ああ、なんか日比谷が言ってたなあ。うちらは誰が勧誘すんの?」
「あたしと未華と舞ちゃん。それと英太くんと牧野くんにも手伝ってほしいな」
「ぼくと牧野?」
「うん。だって話やすそうな人が勧誘した方がいいと思うんだ。剛塚くんとかって怖いし・・・」
言ってから「しまった」という顔で笑うくるみ。つられてぼくも笑う。
「でもさ、くるみと未華はいいけど、早川はダンマリだから違うんじゃない?」
聞くとくるみは苦笑いで答えた。
「未華がね。舞ちゃんは色仕掛けの効果で男子勧誘に効果がテキメンって言うの」
「ははあ・・・。え、いやいや!」
くるみの冷たい目に本気で冷や汗が出た。
「長距離、何人くらい入るかな」
話題を変えてみた。くるみは天井を見上げて少し考えてからポツリとつぶやく。
「たくさん入るといいな」
ファミレスを出て、駅の反対側にあるお洒落なカフェに入る。
ここは男一人ではとても入れそうもない感じだ。
落ち着いた個人店で、席は20ほどしかなく、カップルやおばさんが楽しそうに話していた。
ぼくらは二人して同じ『ケーキセット』を頼んでしまい、店員さんに「仲がいいんですね」と言われ、二人とも固まってしまった。
ぎこちなくケーキを食べる二人。
「仲がいいんですね」のフレーズが何度も頭を駆け巡る。
すごい美味しいケーキだったんだけど、頭がヒートアップして何が何だかわからないうちにお店を出てしまった。
「ご、ごめん英太くん。な、なんか店員さんが、カ、カップルと勘違いしちゃったみたいで」
店を出たところで顔を真っ赤にして慌てふためくくるみがかわいかった。
「あ、謝る事ないよ。わ、悪い気はしなかったし・・・」
「え??!」
くるみが裏返った声で驚いていた。
シンとなる。言葉が見つからない。やっと探した言葉は、ややしつこい誘いの様になった。
「ま、またどっか行こうよ」
驚愕!!というテロップが当てはまりそうな顔をするくるみ。え・・・そんなに嫌なの?
「あ、嫌だったらいいよ」
ちょっと泣き声になりそうなのを堪えてぼくが言うと、くるみは笑顔に戻って答えた。
「そんなことないよ。映画観に行く約束してたもんね!」
結局、どうなんだろう?
くるみは嫌々付き合ってくれてるのか、もしかして・・・両おも・・・・・、いやいやいやいや、そんな都合いい展開は無いよな。無いよ。無いの?
何にしろ明日は新入生の勧誘活動だ。
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『それでは、これより男子5000メートル、第1組を行います』
気温が上がり、春らしい暖かな陽気になっていた。
第1組は40名ほどがエントリーされていて、多摩境高校からは牧野と大山が出る。
一周400メートルのトラックを12週半。
タイムが20分を超えるとその時点で終了となる。
『位置について・・・・よーい・・・』
乾いたピストル音が会場に響き、40名が一斉に走りだす。
「よっしゃー!みんな!全力で声が枯れるまで応援すんよー!!」
未華の男勝りな大声と一緒にぼくらは牧野と大山を応援した。
結果、牧野は自己ベストを更新しての17分38秒でゴール。
大山は19分という際どいタイムではあったが、これまた自己ベストを更新し32位だった。
「おいおいー!なんかみんな調子いいんじゃないのー?」
未華がはしゃぐとくるみも続いた。
「これだと次の雪沢先輩と剛塚くんにも期待しちゃうね!」
第2組は45名。雪沢先輩と剛塚がエントリーされている。
レース開始してすぐにぼくらはどよめいた。
雪沢先輩が先頭を走っているのだ。
「うお!すげ!」
ぼくの横で見ていた名高が興奮している。いや、ぼくだって興奮してるけど。
雪沢先輩は9週目に先頭を明け渡して後退したものの16分20秒でゴールしていた。
剛塚は一定の早さを保ったまま走り切り18分39秒だった。
そしてぼくのいる3組目の順番になった。
名高がウォークマンをはずして、目を見開く。
「何聞いてたの?」
「パンクバンド。ノリがいいから。それに走る前にピッタリな曲を見つけたんだ」
「ナニソレ」
ぼくの質問に名高はニッと笑って答えた。
「おい、相原、名高、時間だ。スタート地点行くぞ」
穴川先輩にうながされてぼくらはスタート地点へと移動した。
3組目は43名。ぼく、名高、穴川先輩の他にも、内村一志の姿があった。
その内村一志の横には、同じ葉桜高校のあの男の姿があった。
「お、秋津伸吾じゃん」
名高は秋津を認めて見合いの入った表情になった。
秋津は、この地区で長距離やっていれば知らない者はいないと言われる程の二年生だ。
その秋津に名高は「いつかオレが勝つけどね」なんて言っていた事があった。
『位置について・・・』
「息続く限り走りぬけろ、その先にきっと何かがあるから」
スタート直前、唐突に名高がつぶやいた。
驚くぼくの顔を見て名高は言った。
「さっきのパンクバンドの歌の歌詞だよ」
『よーい・・・』
43名が飛びだした。
ごった返しの1週目を終えて、コーナーを走りながら自分の位置を確認する。
前には10名ほどの選手がいて、先頭は秋津伸吾と名高、すぐ後ろには穴川先輩と内村一志がいる。
電光掲示版でタイムを確認すると1週で80秒ほどかかっていた。
さっきの牧野と同じくらいのペース、悪くはない。
しかし、秋津と名高がグイグイと前へ行ってしまうので妙に不安になってしまう。
そういえば去年の秋には秋津伸吾に周回遅れにされた事があった。
それほど違う世界のヤツなんだ。仕方ないという事にしておこう。
ん?
じゃあ、なんで名高はその秋津と互角に走っているんだ??
名高のヤツ、ちょっと飛ばし過ぎなんじゃないか?
7週を終えると苦しくなってきた。
それほどペースは落ちてはいないけど、相変わらず穴川先輩と内村一志がぼくの後にピッタリとつけている。
内村だけには負けたくない。コイツだけには絶対に。
そう思って8週目に入った時、その内村がぼくを抜きにかかった。
明らかにペースアップしてぼくを一気に抜いた。
何故このタイミングで?
8週という事は現在3200メートル。まだ1800メートルあるのに何故ここで?
ぼくは追いかけるのはやめておいた。
ここでペースアップしても最後まで持たない。焦る事は無い。
10週半が経過して、残り1000メートルとなった。
内村一志はぼくの前方30メートルくらいの所を走っている。
タイム差にすると7秒くらいしかない。それほど離される結果にはならなかった。
それに内村はフォームがバラバラになりつつあった。確実に疲れている。
ぼくはここでペースを上げ出した。
ゆっくり、ゆっくりとペースアップを図る。
「ぐ・・・おお!」
穴川先輩がぼくに着いてこようと必死な声を出すが、少しづつ遅れていく。
逆に内村一志の背中が少しづつ近づいてくる。
そして残り1週半のところで内村を捉えた。
よし!!
と思った瞬間、秋津伸吾が猛烈なスピードでぼくと内村の横を駆け抜けていった。
早い!いや、速い!しかもまた周回遅れ!
かまわずにぼくは走る。
内村を抜かしてすぐにもう一人、凄いスピードで近づいてくる足音が聞こえた。
思わず振り返ると、名高だった。
ウソでしょ!? 名高に周回遅れにされる??
「う・・・お・・おおおお!!」
ぼくはまるで恐怖したかの様に叫んで、スパートをした。
なんとか名高に周回遅れにはされずに済んだが、妙な冷や汗をかいてしまった。
結果、秋津伸吾が15分25秒というケタ違いの早さで1位。
名高が16分02秒で8位に入り、ぼくが17分15秒でベスト更新!
どうやら秋津伸吾が飛びぬけて早かったらしい。
「あんなの勝てねえよ」
牧野が渋い顔をして、ゴールしたぼくにタオルとドリンクを持ってきてくれた。
「はあ・・・はあ・・・名高も凄かったね」
「名高にはビビった。あいつ、いつの間にあんな早くなってたんだろうな。雪沢先輩より20秒くらい早かったぜ」
5000メートルで20秒というと相当な差だ。
多分、名高は実力的に雪沢先輩を抜いたという事だ。
「はあ・・・はあ・・・、あの変な歌のせいだな」
「歌あ?」
その名高はフィールドに倒れていが、顔は満足そうだった。
秋津伸吾が倒れている名高を見つめている。
恐らく、秋津伸吾の脳には「多摩境高校・名高涼」の名前がインプットされただろう。
「息続く限り走りぬけろ、その先にきっと何かがあるから」
きっと二人は、近い未来、戦う関係になっていくんじゃないだろうか・・・。
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春季記録会。
その名の通り、春に行われる記録会だ。
ぼくら多摩境高校が所属しているエリアでは、秋季と春季の二つの記録会がある。
これは勝ったら上の大会に進むという訳ではなく、ただ純粋に記録を測る大会である。
昨日、四月四日に短距離の種目がメインで行われ、今日は長距離や投擲などが行われる。
今月の下旬には高校総体(インターハイ)の地区予選が控えているため、そのための実力試しの大会でもあり、冬の間に特訓してきた成果を確認する大会でもある。
ただ、学校によっては実力者をこの記録会に出させない方針のところもある。
あくまでも高校総体に向けてコンディションを整えるためだ。
でも、ぼくらはそういうレベルにいる高校じゃあない。
この春季記録会へも全力で取り組むんだ。
・・・と、長々と興奮気味で一気に言っていたのは牧野だ。
今回ぼくら長距離チームが出るのは5000メートルだ。
出場者は長距離全員。つまりは、ぼく・牧野・名高・大山・剛塚・雪沢先輩・穴川先輩だ。
「本当はオレも出たいんだけどな」
五月先生が不敵な笑みでそう言うが、この人はもしかしたら天然ボケなのかもしれない。
ちなみに昨日、短距離では二本松ゆりえ先輩が、中距離ではたくみが好走を見せていた。
5000メートルは全部で3組行われる。
1組目には牧野と大山が、2組目には雪沢先輩と剛塚が、3組目に名高とぼくと穴川先輩が登録されていた。
試合時間が近くなり、メンバーは各々、ウォーミングアップを始める。
去年はこのアップの方法もわからなくて悩んだものだけれど、最近はぼくにもやり方がわかってきた。
人それぞれやり方は違うけど、試合直前に体があったまっていて、疲労が無い状態を作らなくてはいけない。
ぼくはゆっくりとしたペースで、公園内をジョックする事にした。
公園内では色々な学校の選手が走っていたり談笑していたり、先生に説教されていたりする。
それを横眼に見ながらゆっくりと走る。
芝生でウォークマンを聴きながらストレッチしている名高が見えた。
今日は名高と同じ組で走る。その名高がさっき言っていた。
「この記録会。松梨付属は出ないんだってよ。チャンスじゃね?」
マツナシ付属というのはこの地区の強豪私立高校だ。松梨大学付属高等学校。
去年の東京高校駅伝では5位という好成績を見せていた。
これといったスター選手がいるわけでは無いんだけど、選手一人一人が早い。
「松梨付属のヤツらがいないうちのオレが上位入賞しちゃおうかな」
名高はすごい事をサラリと言うヤツだ。
強豪高校が一個いないからって、そんなに簡単に順位が上がるものではない。
そんな大胆な事を言うのに、今はウォークマンなんかしてる。
ほんと変わったヤツだよ。
「よう、また会ったな」
聞きたくない甲高い声に呼び止められたのは、ジョックを終えてテントに戻る途中の階段での事だった。
相変わらずの嫌なニヤニヤ笑いをしながら気楽にぼくの肩を叩いて呼び止めてきた。
葉桜高校の内村一志だ。
「何の用だよ」
ぼくは内村が嫌いだ。コイツのせいで中学の時の恋愛がウマくいかなかったんだから。
・・・って、もう何度も思ってる。ぼくってかなり根深いらしい。
「何って。そっけないなー相原。今日はまたも一緒に走るみたいだから挨拶しただけだよ」
「一緒?」
「え?知らないの?オレも5000メートルの3組だよ」
またかよ!
これで何度目だよ、一緒に走るのは。秋季記録会も駅伝も一緒だったのに。
しかし内村とは現在、1勝1敗だ。ここで勝てれば大きく出れる。
「相原は冬の間どうしてたよ。記録伸びた?伸びるわけないかー。え?微妙に伸びた?」
「今日、確かめる」
「そうなの?オレはかなり早くなったよ。才能が開花しつつある感じなんだよねー」
何が才能だ。早くなったって言っても元々ぼくらのタイムなんてたかが知れてる。
「あ、そうそう」
内村が思い出したかの様に空を見上げた。
「こないだ、長谷川麻友に会ったよ」
「え・・・」
長谷川麻友・・・さん。ぼくが中学の時に好きだったコだ。そして・・・内村も。
「駅で偶然さ。ビックリしたよ。しかも中学ん時よりも美人でさ・・・メアド聞いちゃった」
クラクラしてきた。
ぼくが今好きなのはもちろん若井くるみだ。
でも嫌いな男が、昔好きだった長谷川さんのメールアドレスを知ったと聞くと不安になる。
「でもさー。聞いたんだけど、うまくはぐらかされちゃったよ。オレ、嫌われてんのかな」
な、なんだ・・・メールアドレス、ゲット出来てないのか・・・
「ま、とにかく。今日はオレが圧勝するから。ヨロシク」
内村は握手を求めてきた。
「ふざけるな」
ぼくは握手をせずにテントへと走った。
内村一志は自分の才能が開花しつつあると言った。
それは多分、実力が上がってきたのが自分でわかるからだ。
でも、ぼくの周りで、本当に開花しつつあるのは内村ではなく、あの男だった。
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