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<title>Cafe time　-空の下で-</title>
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<description>繋いで、繋いで、もっとずっと、見えないくらい先まで・・・　金木犀の部、連載中！</description>
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<title>空の下で-金木犀(9)　つながり（その８）</title>
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<description>『ひさしぶりです。最近、全然メールとかしてないけど元気にしてますか？』 日曜の朝...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;『ひさしぶりです。最近、全然メールとかしてないけど元気にしてますか？』&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;日曜の朝、起きたらこんなメールが長谷川麻友さんから届いていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;少し悩んだ。メールを返信していいものかと。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;でもシカトするのも変な話だと思い、何度かやりとりしていると『今日、ランチなんてどうですか？』という文面が送られてきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;これには本当に悩んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ランチくらいなら出かけてもいいんじゃないか、と思いつつも、好きなくるみ以外の女子と出かけるのも変だと思って『ごめん、今、大会が近いから無理』と断った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すると最後にこんなメールが届いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;『そうか、大会が近いんだね。楽しそうだね、応援してます』&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;楽しそう・・・？&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;楽しくは無い。落川学園に勝とうと意気込んでいるのだし、第一、僕は補欠だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;東京高校駅伝大会まで、残り一週間となった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;走る区間が決まったメンバーは、それぞれの区間に合わせた練習をしている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;一番走り込んでいるのは名高だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;担当は三区の８キロなので、そこまで長い距離という訳ではないのだけど、新人戦で落川学園の選手と接触して捻挫して、二週間も走っていなかったという事もあり、とにかく体力を戻そうと必死だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;短い距離、つまり３キロや５キロを担当するメンバー達はスピードトレーニングに励んでいる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;特に大山は３キロ担当で、速度的な速さが必要になってくるのでヒーヒー言いながら走り込んでいる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そしてエースの一区を走る雪沢先輩の気合いは凄まじい。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;五月先生から言われたメニューをこなしつつも、自主的に朝練をやったり、昼休みにもジョックをしたりと鬼気迫るものがあった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;駅伝まで６日と迫った１０月の下旬、学校に登校すると、雪沢先輩と穴川先輩が校庭をグルグルと走っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;丁度、朝練習が終わったとこらしく、二人は僕のところへと走ってきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おう、相原」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;穴川先輩がボーズ頭をタオルで拭きながら手を振る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おはようございます」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕が挨拶すると雪沢先輩が「おはよう」と爽やか笑顔で答えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「今日も朝練ですか？気合入ってますね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ん？まあオレ達三年生にとっては最後の試合だからな。そりゃ気合も入るってもんだよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は笑ってそう言うが、最後の試合って聞くと少し切ない気分になる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「相原は最近、まだ調子悪そうだよな。ちゃんと気合入ってるのかよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;穴川先輩にそう言われ「入ってます！バリバリに入ってる・・・んですけど」と歯切れ悪く答える。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でも調子上がらないよなー。新人戦辺りからじゃねーか？しっかりしろよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;穴川先輩は僕の肩を叩いて部室の方へと歩いて行った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩はといえば難しそうな顔をして僕をジッと見ていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「な、なんですか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;問いかけると雪沢先輩は少し考えてから話した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「相原さあ・・・楽しんでる？最近」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はい？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いやさ、相原といえばさ、入部当初から、なんだか楽しそうに走るヤツだなーって印象があったんだよな。走るのが楽しいってのが見ていても伝わってくる・・・みたいなさ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;なんだかアホみたいに言われてる気がする。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「それがさ、最近感じられないんだよね。楽しんでないんじゃない？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だって・・・、落川学園に勝とうって時に楽しむだなんて・・・不謹慎じゃないですか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おお、相原がそんな単語を使うとはね。国語の授業は有意義みたいだな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;やっぱり僕はアホだと思われてるみたいだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でもな相原、落川学園に勝とうって言ったけど、何でだ？誰かそんな宣言したか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「何でって・・・。だって名高が捻挫したのは落川学園の選手の妨害行為で・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「名高がそう言ったか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いや、それは・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「誰も妨害行為だなんて断言できないんだよ。やられた名高と秋津以外は」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;確かにそうなのだ。僕もその瞬間を見た訳じゃない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ただ単に状況から推理して落川学園の選手が妨害したと思っているだけなのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;転倒した名高も秋津も、一度たりとも妨害されたと訴えてはいない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でも、あれは妨害ですよ！五月先生だって許さないって言ってましたし」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そう・・・だろうな。多分、妨害だよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だったら！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は声を荒げてしまった。校庭に声が響き、練習中の野球部がこちらを見る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だったら何なの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「落川学園に、目にもの見せたいじゃないですか！こんな・・・負けたまま、怪我させられたままじゃ・・・悔しいじゃないですか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は胸が熱くなってきていた。ふつふつとした怒りが芽生える。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「落川学園の去年の駅伝の順位は４０位です！僕らは５０位でした。勝てるかどうかは微妙なトコです。僕は、絶対に勝ちたいんです。そんな時に楽しんで走れだなんて」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「勝てるよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩が何の迷いもなく「勝てるよ」なんて言うので僕はポカンと口を開けてしまった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「オレ達は勝つ。いつもどおりに戦って落川学園に勝つ。あんなヤツらに心を揺さぶられた戦いはしない。それは被害者である名高も秋津もわかってるんだよ。だからさ相原、お前も心を乱されてる場合じゃないぞ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;心を乱されてる？僕が？&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;確かに名高は淡々と練習をこなしている様だけど。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「悔しい気持ちはわかるし、そういう気持ちは力になるけどさ、怒りはスポーツにとってはマイナスでしかないとオレは思う。陸上競技では間違いなくな。相原も変に落川学園に拘ってないで、自分らしく楽しく走れよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩はひと呼吸置いてから言う。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「みんなと走りたくて戻って来たんだろ？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;みんなと走る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そう・・・。そうだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;みんなと走りたくて、走るのが好きで、みんなと走るのが好きで、僕はここに帰って来たんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ここが僕の居場所だなんて思っていたんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その場所で、怒りや焦りばかりで走っていてどうするんだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;もう駅伝大会はすぐそこだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;補欠としてやれる事は怒っている事なんかじゃなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;全力でみんなをサポートして、誰かがケガしたとしてもその代わりで走れるくらいの力をつけなくちゃいけなかったんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;落川学園に勝つためではなく、多摩境高校という僕らのチームのために。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;だって・・・、ここが僕が楽しく走れる場所なのだから！&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「どうした？相原」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;考え込む僕を、雪沢先輩が不思議そうな顔をして覗き込む。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「雪沢先輩・・・。やっぱ、先輩は凄いです！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？な、何が？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「やっぱり雪沢先輩は部長なんだと思いました」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「えーと、どういう意味？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「部長ですよ、部長。やっぱり雪沢先輩は部をまとめているだけはあります。僕の気持ちまで察してくれるなんて・・・やっぱ、なんていうか、凄いと思います」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;今度は雪沢先輩がポカンとした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「僕は、雪沢先輩と出会って、陸上部に誘ってもらって、本当に良かったと思います」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そう言ってお辞儀をして、僕は走りだした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;自分の教室へ、制服のまま。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「君、足速そうだよね。ちょっとウチの部、見学してみない？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;初めて雪沢先輩にかけられた言葉が頭の中に響いていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;あれから一年半。雪沢先輩に声をかけてもらって良かった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;例え補欠だとしたって、最後の大会となる駅伝大会で、せめてお礼と言える様な働きをしよう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;全身全霊でみんなをサポートするんだ！！&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩の入部で始まった多摩境高校陸上部。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;最初のメンバーである雪沢先輩からの意思は、きっと僕らの代にも伝わり、その下の代にも伝わっていく。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;きっと部活ってのは、そんな壮大な繋がりを持った人たちの集まりなんだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;勝つ、負ける、だけじゃない何かを受け止めるため、僕らは駅伝大会に臨む。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩と穴川先輩の、最後の戦いへと。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #ff6600;&quot;&gt;空の下で　金木犀の部「つながり」　END&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #ff6600;&quot;&gt;→　NEXT　金木犀の部「ラストラン」&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;

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&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>９．空の下で－金木犀</dc:subject>

<dc:creator>cafetime</dc:creator>
<dc:date>2009-10-29T17:00:00+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-8b7f.html">
<title>つながり編、描き終わりましたー！</title>
<link>http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-8b7f.html</link>
<description>ま、何が「繋がり」だったのかは一言では表現できないものであって。 「仲間」という...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;ま、何が「繋がり」だったのかは一言では表現できないものであって。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「仲間」という繋がりと表現してもいいんですが、英太が作中で言いたかったのはもっと漠然としたものだった様な気がします。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;英太の感じた繋がりは、陸上部最初のメンバーである雪沢から始まる繋がりであって、その途中に英太も存在していて、まだまだずっと未来へと繋がっていく・・・。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんな感じなんだと思います。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;山梨県への逃亡以降、英太も少し大人になって、考え方や話し方も少し変わってきました。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;きっとこれから大人への道をゆっくりと進んでいくんだと思います。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そして、２nd seasonはいよいよ最後の章へと進みます。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢と穴川の最後の試合であり、年間最大のイベント、高校駅伝大会です。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１st seasonも、この大会の模様を描いて締めくくりましたが、今シーズンもこの大会までを描いて終わろうと思います。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すでに本編では大会の５日前まで話が進んでいますが、英太は相変わらずの不調で補欠入りしています。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみや長谷川麻衣との関係も、あまり決着していません。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その辺りを描きつつ、大事な試合を迎えるメンバーを描いていこうと思います。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;本当に長い話になった2nd seasonですが、いよいよラストです。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;あとひと月ほどの予定ですが、最後までお付き合いください！！&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>日記・コラム・つぶやき</dc:subject>

<dc:creator>cafetime</dc:creator>
<dc:date>2009-10-30T11:49:00+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-10-1782.html">
<title>空の下で-金木犀(10)　ラストラン、五日前</title>
<link>http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-10-1782.html</link>
<description>楽しんで走る。 そう意識すると、走る事は全然楽しくない。 考えただけで楽しくなる...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;楽しんで走る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そう意識すると、走る事は全然楽しくない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;考えただけで楽しくなるのであれば、世の中の人みんなが走る事に楽しさを感じる事が出来るはずだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;例えば運動自体が嫌いな人。例えばダイエットのために走る人。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんな人達までが楽しんで走る事が可能になってしまう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;でも世の中はそんな甘いものではない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;あれほど楽しんで走っていた僕でさえ、雪沢先輩に「楽しんで走れよ」という意見を聞いて、楽しく感じる事は出来なかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;でも雪沢先輩の「怒りはマイナスになる」という意見はよくわかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;何だか落川学園に勝つ事ばかり考えていた僕は、怒りや焦りばかりで、全く楽しく走っていなかったわけだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;どうやったら怒りや焦りを消せるかと考えたところ、牧野に「くるみとデートして来いよ」などと言われたのが駅伝５日前の話だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そ、そんな事出来るか！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そう叫んだが「大丈夫だって。きっと付き合ってくれるよ。あ、付き合うってのは出かけるって事にだからな」とか言われ、何だか乗せられてくるみに「きょ、今日、ご、ゴハンなんかどう？」とか言ってしまったのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すでに練習着から制服に着替えていたくるみが驚いて目を丸くした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;突然、部室近くの廊下でゴハンなんか誘ってどうすんだよ！って思ったが、もう後の祭りだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;午後６時過ぎの静かな廊下では、さっきの僕の言葉を聴き逃すって事は無いだろうし、今は周りには誰もいない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ご、ゴハン？これから？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;何故かアタフタと辺りを見回す仕草がかわいい。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「これから・・・なんてムリだよね。ム、ムリならいいんだけど」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「無理じゃあ無いけど・・・その・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;断られるかな・・・。そう思って心臓がドキドキしてきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;なんでこんな大事な時期に、こんな事してんだろ、と牧野を恨む。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いいよ。あんまりゆっくりは出来ないけど、行こう」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは僕から視線を逸らしたままそう言ってくれた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ほんと？ありがと」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はしれっと言ってみた。本当は飛び上がりたいほどに嬉しいんだけど、何とか抑え込んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕とくるみは別々に部室を出て、隣駅である南大沢駅の改札で待ち合わせた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;普段、僕は牧野と、くるみは未華と早川と一緒に帰っているので、それぞれと別れて、この改札で会った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おまたせ、英太くん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみが手を振りながら改札を抜けて駆け寄ってきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;思わず「うわあ、幸せ」とか呟きたいけど、ここは我慢。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「待った？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは笑顔だった。この笑顔を見ると僕はホッとする。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;癒されるとかそういう事ではなくて、ほんの数ケ月前には冷たい対応をされていたので、笑顔で話してくれる事が嬉しくてホッとするのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;もちろん、癒されたりもするんだけど・・・。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「待ってない。今さっき来たばっかだから」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ほんと？マイちゃんと未華に、ちょっと今日は一人で帰るって言ったら色々聞かれちゃってさあ、遅くなっちゃった」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？大丈夫？なんか疑われたりした？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ううん、お母さんとゴハン食べに行くって嘘をついてしまいました！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;てへっと笑うくるみを見ると、自分までヘラヘラしてしまいそうになる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「じゃあ、その辺のお店でも入ろうか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;南大沢駅から、わずか二分も歩くと、大きなアウトレットモールがある。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ここには色々なブランドのアウトレットのテナントが５０以上も入っていて、レストランも数店舗入っているのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そのうちの、あまり高くなさそうなパスタ店に僕らは入った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;店内は５０席ほどの広さで、少し照明を落として雰囲気作りをしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そこにカップルや若い女性グループなどが賑やかに食事をしている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;入口近くの二人用のテーブル席につき、テーブルの上に置いてあるメニューを見ると、「ディナーセット１３８０円」と明るい色のポップ書体で書いてあり、１５００円が最大予算だった僕としてはひと安心だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;店員さんを呼び、二人でオーダーをし終わると、くるみが「久しぶりだよね」と言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「英太くんと出かけるの」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは運ばれてきたお冷のコップを見つめながら呟く様に話す。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「前は多摩センターでカフェに入ったんだよね。覚えてる？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そりゃ、覚えてるよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕としては大事な思い出だもの。忘れるわけがない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あの時、今度は映画に行こうって英太くん言ってたよね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ドキリとする。実際には映画は長谷川麻友さんと行ったわけで・・・。しかも、その事はくるみにはバレているわけで・・・。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そ、そうだね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「せっかく夏休みがあったのに、映画に行かなかったよね。その・・・、わたしが色々と勘違いしちゃって、怒っちゃったせいで・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いや、それは・・・あんなメール見れば勘違いもするって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川麻友さんと映画に行くっていうメールだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;夏合宿中に、たまたま携帯を開いたまま置いておいたら、くるみが目撃してしまったんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「英太くん、今日はせっかくの機会だから謝っておこうと思って」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ、謝る？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そう。わたし、別に英太くんの彼女ってわけでもないのに、英太くんと長谷川さんって人が映画行くって知って、なんだか冷たくあたっちゃってさ。頭おかしいよね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「お、おかしくなんかないってば」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そこへ店員さんがオレンジジュースと紅茶を持ってきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;オレンジジュースを僕の前に置き、紅茶をくるみの前に置き「お砂糖とミルクはこちらをお使いください」と言って去っていった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは店員さんが手で案内した場所から砂糖を取り出し、紅茶に入れてかき混ぜる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「それでね。今度はわたしから誘おうと思って」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「今度の駅伝大会終わったら・・・。えーと、そのさ、なんていうのかな、え、えーと・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは何やら呟きながら、ストローでぐるぐると紅茶をかき回す。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;だんだん凄いスピードになっていく。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;あまりにかき回すので紅茶が勢いあまってこぼれそうになって、はっとした表情をしてストローを止めて言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え、え、駅伝大会終わったら、今度こそ映画を観に行こうよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;最初、くるみの言葉の意味が理解できなかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみの方からデートに誘ってくれてるんだと判断するまでに五秒はかかり、その間の僕はコップを持ったまま固まっていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「も・・・、もちろん！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;と言ってから、駅伝大会という単語が頭に残り、言葉が止まってしまった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ど、どうしたの？英太くん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ・・・いや・・・。そのさ、駅伝大会ってさ。僕は補欠なんだよね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くるみは黙っている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「補欠なりにみんなを全力でサポートしようと思ってるんだ。出場するみんなが試合に集中できる様にさ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「雪沢先輩と穴川先輩の最後の試合でしょ。あの二人に、悔いの無い試合をしてもらいたくて。だから本当に全力で補欠の仕事をしようと思ってるんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「雪沢先輩たちが、本当に悔いの無い試合が出来たら・・・、僕の補欠の仕事がちゃんとなってたって言ってもらえたら・・・。その時には・・・、映画行こう」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「・・・うん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「全然ダメだったら、しばらく反省したいから、また今度の機会でいいかな。その時は絶対、僕から誘うから」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;なんだか一気に話しまくった僕の言葉を、頷きながら聞いていたくるみは笑って答えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん、わかった。なんだか英太くんらしくなってきたね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そ、そう？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん、今の・・・決意表明？　話してる時の英太くん、なんか気合い入ってたけど、楽しそうだったよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「楽しそう？？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;久しぶりに部のメンバーに言われた気がした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕が楽しそうにしていると。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;何かが元に戻りつつあるのか。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それはわからないけど、くるみと話しているうちに僕の気持ちは軽くなっていった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ああ、やっぱり僕は、絶対に、間違いなく、この人が好きなんだと思いながら会話した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そうして、駅伝大会五日前の一日は終わった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>９．空の下で－金木犀</dc:subject>

<dc:creator>cafetime</dc:creator>
<dc:date>2009-11-02T17:00:00+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-11-aab2.html">
<title>空の下で-金木犀(11)　ラストラン、三日前</title>
<link>http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-11-aab2.html</link>
<description>１０月３１日。 駅伝大会まであと三日と迫ったこの日は、最後の猛練習となっていた。...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;１０月３１日。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;駅伝大会まであと三日と迫ったこの日は、最後の猛練習となっていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;明日からは軽めのメニューに変更になり、各自疲れを取りながら走るという予定となっている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「走っているのに疲れを取るっておかしくないですか！」とヒロが叫んでいたが、陸上選手というのはそういうものだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;走る事が当然の体になっているので、ジョックを一時間やるくらいなら体力を落とさずに疲れを取るという事が可能な体になっているのだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;もちろん、これは僕らが今までずっと過酷なメニューをこなしていたから出来る事であって、一般の人には当てはまらない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;夕方ともなると、走り始めの体には風が冷たく感じる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;いつもの練習場となっている小山内裏公園の木々は、ほんの少しずつだけど紅葉を始めていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;日が傾くのが早くなり、午後５時にはうす暗くなってしまう。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんなうす暗い中、僕らは公園内でビルドアップ走とインターバル走をして、心臓にハードな負担をかけた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;合宿以降では最もキツイ練習な気がしたが、不思議と僕は楽しかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;補欠と決定して不調の諦めがついたのか、妙に落川学園への勝利に固執するのをやめたからなのか、それとも、くるみとの仲が良くなったからなのか、それはわからないけど、ここ数日、練習が楽しく感じていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それと共に調子も上がってきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;体が軽くなり、一歩一歩が確実に踏めている様な気までしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;この日、文字通り、倒れるほど練習をした後で、牧野と二人で帰宅した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;校門のところまで歩いたところで、定期入れを部室に忘れてきたことに気付く。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ、やっばい。取ってくるや。待ってて」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「やだよ。先帰るよ。早く帰らないと、『爆笑・赤い劇場』に間に合わないから」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「またお笑いテレビかよー」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「全ての笑いは陸上に通じる！バイ、牧野清一」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「清一？誰だっけ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「オレの名前だ、バカ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;くだらないやり取りをした後、部室に戻ると、まだ電気が点いていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;部室の中には雪沢先輩がいて、丁度着替え終わったところの様だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おお、相原。どうした」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「定期入れ忘れちゃって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はあ？相変わらずだな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;何が相変わらずなのかよくわからないけど「そうですねー」と言い、定期入れを探す。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すると、さっき座っていた場所に僕の定期入れが落ちていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あー、あったあった。これで帰れます」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「良かったな。失くすなよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はい。じゃあ、お先に失礼します」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;頭を下げて挨拶をし、部室を出ようとしたら「ちょっと待て相原」と声をかけられた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はい？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「調子はどうだ。なんかよくなってきたっぽいな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は通学カバンを肩にかけて言った。「たまには一緒に帰ろう」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩と二人で駅まで歩くのは初めてだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;入部から一年半も経つというのに一度もなかったなんて不思議なもんだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は僕の調子が良くなってきている事を喜んでくれている様で、そんな内容の会話をしながら暗い夜道を駅へと歩いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「雪沢先輩はどうなんですか？調子良さそうですけど。でも一区は１０キロだから大変ですよね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は花のエース区間である、一区を走る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「去年はエントリーはしたけど、例の乱闘騒ぎで怪我して名高と交代したからな。今年は何が何でも走りたいよな。最後だし」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そうだった。雪沢先輩は去年、名高との激しいエース争いをして一区の出場権をもぎ取ったものの、安西達の襲撃を受けた時に足を怪我して、試合には出なかったんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「オレが一年生の時はさ、まだ多摩境高校が創立した年だったから、学校には一年生しかいなくって部員も少なかったから、駅伝には出場できなかったんだよね。それで去年、相原たちが入部してきて、やっと駅伝に出れると思ったら怪我だろ？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は笑いながら思い出を語っているが、きっとその悔しさはハンパじゃなかっただろうと思える。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そして今年、ついに駅伝で走れるんだ。それも花の一区。まさか初の高校駅伝出場が引退試合だなんて想像してなかったけどな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「引退・・・ですか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「おい相原、何を暗い顔してんだよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;バシンと音を立てて、僕は背中を叩かれた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いて！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「シッカリしろよ相原。これからはお前らの代が陸上部を引っ張って行くんだぞ？オレが引退したら、オレ達が作ってきた陸上部を未来へと残していくのはお前らの役目なんだからな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「み、未来へ？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「そうだよ。まだこの陸上部は始まって二年半なんだぞ。多摩境高校陸上部の長い長い歴史の中じゃあ、まだ第一章に過ぎないよ。これから先、第二章は、相原たちが作っていくんだ。シッカリしてもらわなくちゃ困る」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ・・・そうですよね。シッカリしなくちゃ・・・。全力で補欠をやるって決めたばっかでした」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;言うと雪沢先輩は少し不満そうな顔をした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「な、なんですか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いやな。オレは本当は、相原にも駅伝に出場してほしかったんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「僕にですか？でも、不調で・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「まあそうだ。相原は明らかに不調だったから、今回のメンバーに選ばれてないのは当然だ。でも、なんていうか、相原の楽しそうに走る雰囲気が出場メンバーの中に欲しかったんだよな。その雰囲気がタスキを通して、みんなにも伝わりそうな気がしてさ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;遠くに駅が見えてきた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その駅を眺めながら雪沢先輩は続ける。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「覚えてるかな、相原。今年、一番最初に出た大会を」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「一番最初・・・？『高尾みどり駅伝』ですか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;年明け最初に出場した、地域の駅伝大会が『高尾みどり駅伝』だった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は三区を走り、粉雪が降る中で、四区である雪沢先輩にタスキを繋げたんだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あの時、粉雪の中で感じたんだ。相原の楽しく走る雰囲気を。タスキを通して」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はあの時と同じように空を見上げた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;粉雪が降る様子はない。ただ小さな星たちが瞬いているだけだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だから今度はオレがタスキに想いを込めて、次の選手に伝えていきたいんだ。オレ達が作った陸上部への想いを」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は視線を星から雪沢先輩に戻す。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩は立ち止ったので、僕も立ち止る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「オレが二区の大山にタスキを繋げる。どんな事があっても必ず繋げる。できたら落川学園に勝った状態で繋げる。そして大山は次へタスキを繋げる。どんどん繋いでいくうちに、みんな想いを乗せたタスキはアンカーまで届く。アンカーまで届いたタスキの想いは補欠である相原やヒロ、そして大塚や若井や早川にも届くと思うんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「・・・はい！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「だから相原も、この先、どんどんと繋いでいってくれ、いずれ現れる、新一年生たちにも。頼むぞ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雪沢先輩の言葉からはかつてない気合いと覚悟と優しさが溢れている気がした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「陸上部を頼むぞ。未来へ繋げてくれよな」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「はい。絶対繋いでいきます！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;大きな声でそう言うと、雪沢先輩は悪戯っぽく笑った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でもなー、相原は部長向きじゃないよなー。天然っぽいし」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「て、天然！？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;こんなに雪沢先輩と話したのは初めてだと思った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;こんなに胸の内を明かしてくれたのは初めてだと思った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんなに思われている駅伝大会までは、あと三日という夜は、きれいな月が多摩境の街を照らしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>９．空の下で－金木犀</dc:subject>

<dc:creator>cafetime</dc:creator>
<dc:date>2009-11-05T17:00:00+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-12-e358.html">
<title>空の下で-金木犀(12)　ラストラン、二日前</title>
<link>http://cafetime.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/-12-e358.html</link>
<description>いつかはこんな日が来るとは思っていた。 同じ街に住む者同士だから、偶然会うなんて...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;いつかはこんな日が来るとは思っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;同じ街に住む者同士だから、偶然会うなんてのは何の不思議も無い。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;しかし、何もこんな駅伝二日前という大事な時期に会う事になるだなんて・・・。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;思えば、今年の梅雨の時期に会った時も、偶然出会ったんだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;今日も、あの時と同じように冷たい小雨が街を染めていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;部活を終えて、電車で僕の家のある堀之内駅の改札をくぐり、傘を差したところで「あれ？」という声がして右を向くと、長谷川麻友さんが僕と同じように傘を差していた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「相原くん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんは、ちょっと驚いた表情を一瞬見せた後、口を開けずに上品にほほ笑んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「偶然だね。今、部活帰り？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんは松梨大学付属高校の制服姿で、右手に傘、左手には学校指定の紺色のカバンを持っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;カバンには、小さな白クマのぬいぐるみが着いている。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ・・・、長谷川さん。あ、うん、部活帰り」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕は何故だか少しキョロキョロしてしまった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;こんなところを牧野とかに見られたら、また何か言われるかもしれないし、くるみに見られでもしたら、また誤解でも生みそうだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「どうしたの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そんな仕草が気になったのか、長谷川さんは少し首を傾げて問いかける。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いや、なんでもないけど・・・。長谷川さんこそ、こんな遅い時間に制服でどっか行ってたの？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ううん、文化祭の準備でね。七時まで学校で作業してたんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「へえ、文化祭かあ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕らの多摩境高校の文化祭は１１月の下旬にあるので、まだそんなに遅くまで準備する時期じゃあない。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;それでもクラス委員や生徒会の人たちは何かと準備に追われてはいるみたいだけど。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あさって、三日に文化祭なんだ。相原くんも来ない？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんは僕をまっすぐ見つめてそう言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕を文化祭に誘ってくれるなんて・・・。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ええと、ごめん。二日後だよね。その日、大事な試合があってさ・・・ちょっと無理」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;すると長谷川さんは「そっかあ」と言って目を逸らした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;少しの間、二人の間に沈黙が落ちる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その間にも小雨が二人の傘を水で染めていく。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「相原くんち、どっちだっけ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？川の方だから、あっちだよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ほんと？同じ方向だね。途中まで一緒に帰ろうよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕と長谷川さんは小雨の中、駅を離れ、大きな都道を越えて、一軒家ばかりが立ち並ぶ道を歩く。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;駅前とは違い、人も車も通りが少なく、そのせいか街灯がちゃんと点灯しているのに暗く感じる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;お互いの学校での話をしながら歩いていき、ある小さな十字路のところまで来ると長谷川さんは立ち止った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「じゃあ、私はここ左に曲がるから・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ、長谷川さんってそっちなんだっけ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;僕はこのまま真っすぐに進むので、ここでお別れという訳だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でもさ、送っていこうか。もう八時近いし」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？うん。嬉しいけど、大丈夫。ここから歩いて一分くらいだから」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;再び、沈黙が流れる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんは鼻の先を指でかきだした。いつもの癖だ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「相原くんってさ・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「うん？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「その・・・、彼女さんとかいるんだっけ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;雨が少し強くなる。左から風が吹いているらしく、近くの家の木がカサカサと揺れる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「いない・・・よ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あ、そうだっけ。ご、ごめんね、変な事聞いちゃって」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その時、僕は心で決意を固めた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;このまま曖昧な事ばかり言っていると、きっと長谷川さんを深く傷つける事になると気付いて。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;だから正直な事を口にする。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;今なら、まだそこまで傷つけないで済むのかもしれないから。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そして、いいかげんだった自分の気持ちにも全てのケリをつけられるかもしれないから。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;お互いが、少し傷つき、少し壁を作ってしまうかもしれない、この言葉を。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「でも、同じ部に・・・その・・・、好きな人がいるんだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;言い終えた瞬間、自分がクラクラとした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;おっと！と思い、しっかりと地面に立つ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんはというと、驚いた様な泣きそうな様な複雑な表情をしていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;その表情を見て、僕が泣きそうになった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;やっぱり傷つけてしまったじゃないか。そういう思いが頭の中を駆け巡る。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;と、長谷川さんはニコリと笑い、弱々しい声でこう言った。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「やっぱりね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「え？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「なんかね、今までやりとりしてて・・・なんかわかってたよ。相原くんに好きな人いるの」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「長谷川さん・・・」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんは笑顔でそう言ったけど、その笑顔が僕には少し苦しかった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「あーあ、タイミング合わなかったね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「タイミングって？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「私たちのタイミング」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「えっと・・・それって？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;長谷川さんはクスっと音をたてて笑って言う。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「ううん、何でもない。もう帰るね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そして長谷川さんは歩きだした。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;少し歩いたところで振り返り、ちょっとだけ大きな声で叫んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;「また会ったら、また話そうね！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;そうして長谷川さんは小雨の中、歩いていった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;最後に見せたくれた笑顔は、僕の中にずっと住んで行く事になる。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;想い出という名前で。ずっとずっと未来まで。　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;不思議なもので、同じ街に住んでいるというのに、それから僕と長谷川さんが会う事は無かった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ただ一度だけ、何年かした冬の冷たい風の中、隣の多摩センターの駅で、遠目に長谷川さんを見かけた事があった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;友達と一緒に、楽しそうに笑いながら歩く長谷川さんを見て、ちょっとだけ胸が苦しくなりつつ、この駅伝二日前に出来事を思い返すのだった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


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